「津波、停電が事故主因」 原文振 多彩な識者で福島シンポ

日本原子力文化振興財団は21日、東京・有楽町の朝日ホールでシンポジウム「これからの原子力を考える──東京電力福島第一原子力発電所事故と原子力の行方」を開催した。

ジャーナリストの田原総一朗氏をコーディネーターに、石川迪夫・日本原子力技術協会最高顧問、作家の豊田有恒氏、評論家の西尾幹二氏、山名元・京都大学原子炉実験所教授、吉岡斉・九州大学副学長が論戦を戦わせた。

石川氏は今回の福島事故の原因を、「設計を上回る津波と10日間に及ぶ停電」とし、「人災を指摘する人もいるが、あったとしても二次的なものだ」と付け加えた。また、「今回の事故を世界が驚愕して見ている。情報をきちんと出して世界に発信することが日本の責務であり、それが信頼につながる」と述べた。

豊田氏は、福島の平坦な海岸に十数メートルの津波が来るのは「想定外」であり、これを批判するのは間違いだとし、「この事故を機に、世界に誇る日本の最先端技術を葬り去ってしまうことがあってはならない」と述べた。

西尾氏は、「米国の規制機関のNRCは海軍出身者が多い。常に最悪を想定して事に当るのが、軍事の基本だ。それに比べて、日本の関係者は甘すぎる」と指摘した。

山名教授は、「工学的な課題は徹底的に立て直さなければならない」としながらも、福島事故後の問題は、国のエネルギー安全保障や温暖化対策、防災や安全規制、事業者経営とコスト、自然災害と他のリスク、国と地方、社会と情報・メディアなどの「議論の混乱」と「異常な言論空間」だと指摘した。そのうえで同教授は、「原子力は今後も重要なエネルギー源であり、十分に使っていけると考えている」と述べた。

国の福島原子力発電所事故調査・検証委員会の委員でもある吉岡副学長は、12月下旬の事故調査中間報告までは内容は明らかにできないとしたうえで、300名近い関係者からの聞き取りで、「事故が現在のレベル7(最悪位)に収っているのが不思議なくらいだ」との感想を述べた。

同氏は以前から、原子力については全面否定ではなかったものの、「電力生産としては劣る技術だと思っていた」とし、「国家の保護(研究費や地方交付金など)を全面的に廃止し、市場原理で原子力がなくなればいいと考えている」と語った。

また、西尾氏は1年前に福島第一原子力発電所1号機の運転期間を40年から60年にしても健全性に問題ないとした安全規制当局にも、問題があると指摘した。

豊田氏は「古い原子力発電所はやめて、新しいものをどんどん作るべきだ」と主張した。

急遽、田原氏の要請で、放射線の専門家として参加した佐々木康人・元放射線医学総合研究所長は、放射線影響について解説し、原爆被害などの研究から、放射線作業従事者の、18歳から65歳までの労働最大被曝量を1000mSv程度に抑えるため、年間では20mSvとしていると説明。一般公衆は、さらにその10分の1を目安とし、胎児や乳幼児は大人の3倍程度の放射線感受性があると解説した。


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