各分野から事故解明目指す 総合シンポ 関連学協会が集って議論

原子力総合シンポジウム(日本学術会議主催、日本原子力学会他共催)が19日、学術会議本部講堂(東京・六本木)で開催され、福島原子力事故に伴う被災地域復興や原子力安全の再構築等について、関連学協会の有識者らを交え議論を行った。

地震・津波の評価について原子力安全委員会で指針類見直しに携わる入倉孝次郎氏(京都大学名誉教授)が、放射能除去・環境回復について原子力学会会長を務める田中知氏(東京大学工学系研究科教授)がそれぞれ課題、進展状況を説明するなど、各界の専門家らが今般の原子力災害に関連して、問題を提起した。

パネルディスカッションでは、機械学会の立場から白鳥正樹氏(横浜国立大学特任教授)が、原子力事故を受けての将来のエネルギー利用評価、規格類の見直し、他学会との連携、市民との対話など、学会の活動状況を紹介したほか、日本におけるロボット技術の現状にも触れた。続いて、事故の教訓に立脚し、井上孝太郎氏(科学技術振興機構上席フェロー)が、起因・想定事象の見直し、教育・訓練の強化、管理体制の見直し、付属施設の点検など、抜本的対策を講じる必要を強調し、「常に安全性を高める仕組み」、「緊急時に有識者の意見を有効に反映する仕組み」の構築を述べたほか、「巨大システムには複雑な『想定外』が存在しうる」ことなども指摘した。

これらを受け、現在、政府、国会で進められている事故調査検証を巡り、松岡猛氏(宇都宮大学工学部教授)が、「再発防止の出発点は事故の解明」とし、あらゆる組織に対する提言がなされるよう、学協会や海外専門家も交えた事故調査機能の必要を強調した。

また、リスクコミュニケーションに詳しい木下冨雄氏(京都大学名誉教授)は、事象の発生確率に対する見方から、「想定外」のタイプを具体例をあげて分類した。例えば、「極めて稀」との見方で「隕石が原子炉を直撃」を、「その根拠が太古の資料、学界として低確率」との見方で「マグニチュード9クラスの巨大地震発生」などを「想定外」と判断していることなどをあげた。

さらに木下氏は、「想定外」のタイプで、「過信、慢心から低く見積もった」や「不安を意識から追いやるため外した」見方をあげ、今般の事故拡大の一因とされる「安全設計指針で長時間の全電源喪失を想定していない」ことへの問題点を示唆し、「危ないと思われることがあれば『想定内』とすべき」と指摘した。

一般参加者からは、「安全神話」に換言される原子力ムラのおごり、リスク管理に関する学校教育の充実などに関する意見等々、終了時までほぼ満席の会場内からも多くの発言があり、原子力安全確保に対する関心の高さがうかがえた。


お問い合わせは、情報・コミュニケーション部(03-6812-7103)まで