ベトナム首相が熱望 日本からの原子力輸入 福島事故後も方針変えず

来日したベトナムのグエン・タン・ズン首相と野田佳彦首相が10月31日、首相官邸で日越首脳会談を行い、日越共同声明と「ベトナムの原子力発電所建設に係る協力に関する日越政府間の文書」などに署名した。ズン首相は会談で、3月の東日本大震災で福島第一原子力発電所事故が引き起こされた後も、日本の高い原子力技術の活用について引き続き大きな期待を表明し、野田首相も「福島第一原子力発電所事故の経験と教訓を共有しつつ、ベトナム政府の意向も踏まえて、高い水準の原子力安全が実現されるよう、ベトナム側と引き続き協力していく」と述べ、日本政府として、原子力輸出政策を今後も推進していくことを表明した。

ズン首相と菅直人前首相が昨年10月に、ベトナム・ニントゥアン省の原子力発電所第2サイトに原子炉2基を建設する際、日本を「協力パートナー」に正式に選定してから、両国政府は今年1月20日に日越原子力協力協定に署名、日本政府は批准のため国会に提出したが、3月11日に起きた地震・津波で福島第一原子力発電所が炉心溶融を含む甚大な被害を受け、原子力政策のあり方についても見直し機運が高まったことから、国会審議は継続審議になり、ロシア、韓国、ヨルダン3原子力協力協定と共に今臨時国会に再提出されている。ベトナム側ではすでに承認手続きが完了していることから、今首脳会談でも日本側の早期批准が要請された。

今回締結された原子力発電所建設に関する日越政府間文書は、本文は公表されず概要のみとなっているが、これまでの政府間の協力事項から一歩踏み込んで、原子力発電所の建設を日本の事業者(メーカー)が担うことを明記した。

さらに、日本政府は、原子力発電導入可能性調査(FS)を行っている日本原子力発電会社を監督するとともに、同社に必要な財政的支援も行うとしている。運転などの人材育成についても、今後5年間で約1000人の研修を支援し、低金利融資にも取り組んでいく、としている。

日越の民間ベースでは、9月に日本原子力発電がベトナム電力公社とFSを実施する正式契約を締結し、国際原子力開発会社(JINED)も同公社と原子力発電導入に向けた協力覚書を結んでおり、同プロジェクトは推進に向けて着々と進んでいる。


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