英国の原子力新設計画が前進 年末までに暫定設計承認

英国の原子力規制機関(ONR)は10月26日、政府の原子力新設計画の一環として実施している包括的設計審査(GDA)の進捗状況について9月末までの四半期報告書を公表し、ウェスチングハウス(WH)社のAP1000、および仏電力(EDF)とアレバ社の欧州加圧水型炉(EPR)の両方について、年末までに少なくとも暫定的な承認を与えられる見通しだと発表した。福島事故の影響により、6月末に予定していたGDA手続きの完了は約半年間、遅延を余儀なくされたが、ONRのM.ウェイトマン長官が先月、同事故からの教訓に関する最終報告書を公表したのを受け、今後の作業が加速すると期待されている。

GDAは事前設計認可の一種で、実際に原子炉を建設してしまう前に「標準設計」とすべき原子炉設計の安全性と環境影響についてONRと環境省(EA)が審査を実施。最終的にONRが設計容認確認書(DAC)を発行する一方、EAは設計容認声明書(SoDAC)を発行する。

福島事故後、ウェイトマン長官が5月に中間報告書を出した際、設計企業は要請に従い同事故から引き起こされる影響についての情報を提出した。

7月になると英国の規制当局は両設計の安全性に関する暫定的な評価を終え、安全上さらに改善が必要と判断された一連の「GDA問題」について、解決プランを設計企業から提出させていた。

ウェイトマン長官による報告書作成にはGDA関係その他から多大な人員が割かれ、実質的にGDAの作業は遅延した。しかし、10月11日に同長官が最終報告書を公表したことから、設計企業側も同事故からの教訓への取り組みを実証する解決プランの策定が可能になった。

今回の四半期報告書の中でもONRは、「未だに合意に至っていない解決プランは福島事故に関するGDA問題への取り組みを要するプランのみ」と強調。審査の結果、これらのプランが信用に足ると判断できれば、年末までに2つの原子炉設計に暫定DACと暫定SoDACの発行が可能になると明言した。

なお、審査経費は申請者に対して請求されており、1設計に付き2500万ポンドと言われている。WH社はAP1000について必要な情報の提出を約束しているものの、経費が確保できるまではGDA問題に取り組めないとして審査の中断を要請。このため、解決プランの開始時期を確定できず、ONRが作業を再開する際は、双方がGDAチームを再動員し、WH社も改めて同プランの基本線を描く作業が必要になるとしている。

一方、EDFとアレバ社は「英国EPR」の最終DACとSoDAC取得に向け、十分な証拠を提示すると約束した。両社は解決プランを滞りなく実施中で、一部の項目についてはすでにONRが評価を開始。英国EPRに関するGDAはすでに完了段階に入ったことを強調した。


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