既存炉の運転認可は延長せず 台湾

台湾の馬英九総統は3日に今後の新たな原子力政策を発表し、現在運転中の原子炉で40年の運転認可が切れた後はこれらを延長せず、「原子力のない社会」に向けて段階的に手順を進めていくとの方針を明らかにした。

同総統の国民党政権は元来原子力推進派であり、建設工事が長引く龍門原子力発電所の早期運開を目指している。しかし、福島事故発生を受けて同原発建設に反対する大規模なデモが展開され、来春に実施を控えた総選挙および総統選挙戦でも原子力が争点として浮上。こうした背景から、野党・民進党が打ち出した脱原子力政策寄りの方針を打ち出さざるを得なくなったと見られている。

ただし、同総裁は龍門原発については福島事故の教訓から追加の改善策を手当中だと強調。厳しい安全要項をすべてクリアすれば営業運転を開始させると約束した。また、同原発の運開後は原子力開発利用計画全体も含めた国家エネルギー政策を4年毎に見直しし、原子力の廃止を決定してしまう前に電力の使用制限等の影響について検討すると説明。「原子力のない社会」を実現する具体的な日程目標には言及しなかった。

台湾では台湾電力公社が3サイト・6基の原子炉すべてを操業。99年からは4サイト目として、ABWR2基から成る龍門原発の建設工事を進めているが、政治環境に翻弄され未だに完成していない。同社はまた、09年7月、運開後40年の認可が18年と19年に切れる金山原発の2基について、20年の認可延長を原子能委員会(AEC)に申請したが、福島事故発生を受けてAECはこの審査を中断した。

馬総統が5月に開催したエネルギー政策会合では、次の2点の方針が決定された。すなわち、(1)政府は5つめの原発建設を検討しない(2)台湾の今後のエネルギー政策は3つの基本原則――給電調整を行わない、安定した電気料金の維持、国際的なCO排出削減目標達成の努力を継続――に基づいて策定する、である。

馬総統の今回の発表によると、新政策は脱原子力社会実現へのプラン策定を勧告する環境基本法・第23条に沿ったもので、3つの基本原則に見合うよう、現実的かつ責任の負える方法で策定。具体的には、既存の3サイトの原子炉については40年の運転認可を更新しない。また、龍門原発の2基が両方とも2016年以前に安定的な営業運転に入った場合、金山発電所の2基は早期に廃止することになるとしている。


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