日本製鋼 海外からの大型機材受注は堅調 福島事故後も500億円受注 年間12基製造体制確立 今後も安定受注継続めざす

大型原子力機材の製造大手、日本製鋼所(佐藤育男社長)が発表した今年度決算見通しによると、今年3月の福島事故後も、フランス、中国など海外からの受注を中心に約500億円の新規受注を見込んでいることが明らかとなった。国内の原子力論議をよそに、事故後も海外から原子炉圧力容器や蒸気発生器などの実需が変らずに入っていることが浮き彫りとなった。

日本製鋼所は18日、投資家向けの決算説明会を開いた。今期12年3月期の売上高は2270億円(前期比6.6%増)と当初予想を若干上回った。営業利益は当初予想よりは25億円多いが、220億円と同22.5%減と大幅に予想を下方修正した。営業利益率も前期13.3%だったものが、9.7%にまで低下する見込み。

このうち電力・原子力部門の売上高は、前期売上高が433億円だったものが、当初予想よりは若干下回るものの、510億円と17.8%増加する見通し。一方、前期中の受注が528億円あったものが、今年度中には380億円に大幅に落ち込む計画になっている。受注高の内訳は原子力6、火力発電4程度の割合になる。

電力・原子力の受注済み案件のうち、製造未着手で、かつ長期にわたって着手が見込めないと判断した案件約118億円分を、受注残から差し引いたが、来期以降は、計画通り進むものと見ている。それでも今期の新規受注は498億円となる見込み。結果、今年度末の受注残高は計804億円で、うち6割程度の約500億が福島事故以降の新規受注分であることを明らかにした。フランス、中国からの新規受注が多いという。これらの受注は、13年3月期、14年3月期の売上に貢献する。

同社は、世界的な原子力拡大期待から、世界最大級の1万4000トン大型水圧プレス機を1台から2台体制に増強するなど、09年3月期から11年3月期までの3年間で約800億円の大型設備投資を行い、原子力大型鍛鋼品の製造能力を年間5.5ユニットから12ユニットまで拡張した。

同社では当面、今後の国内需要は厳しい状況が続くものと見ているが、海外は「引き続き期待できる」とし、今後も年間450億円から500億円程度の安定受注を目指す。

新規では圧力容器や蒸気発生器などのほかに、原子力や火力発電所用のタービン・ローターシャフト、国際熱核融合実験炉(ITER)トロイダル磁場コイルのコイルケース用に同社が独自開発した極低温用高強度高靱性非磁性鋼、過去に納入実績のある使用済み燃料の輸送・貯蔵容器(キャスク)の完成体の受注などにも期待を寄せている。


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