「低原子力ケース」試算 エネ調 IEA局長よりヒア

経済産業省の総合資源エネルギー調査会・基本問題委員会(委員長=三村明夫・新日本製鉄会長)は16日、国際エネルギー機関(IEA)のファン・デル・フーフェン事務局長を招き、同機関がこのほど取りまとめた「世界エネルギー予測2011」について説明を受け、意見交換を行った。その中で、同氏は、「新政策シナリオ」と合わせて、将来、OECD諸国に原子力発電が新設されないことを仮定した「低原子力ケース」による試算を示した上で、日本のエネルギー安全保障や温暖化ガス排出への影響を説き、「減原発依存」の場合にとるべき方策を委員らに問いかけた。

フーフェン氏はまず、福島事故以降、原子力を巡る状況は、「不確実性にさらされた」とするとともに、CO2排出量、エネルギー効率、石油輸入額といった重要な指標が、「憂うべき方向性」に傾き始めていると警鐘を鳴らした。また、2035年までに、世界のエネルギー需要は、現在の3分の1相当増加、その増分のうち、半分は中国とインドが占め、再生可能エネルギーによる供給分は大きく伸びるものの、依然と化石燃料の割合は高く、それに伴い、エネルギー起源CO2排出は、1900年からの累積量で、中国がEU全体を、インドが日本を抜くと予測。

一方、日本に関しては、原子力を新設せず、順次、廃炉にしていく「低原子力ケース」を想定した場合、現行のエネルギー基本計画で30年の「絵姿」とする原子力の発電量シェア53%は、18%にまで下がり、化石燃料の需要量・輸入額の増加の結果、日本に大きな経済的負担、エネルギー安全保障面の懸念、排出量の増加をもたらすとフーフェン氏は述べた。その上で、原子力への依存を減らすのであれば、「どこかで補わねばならない」として、今後の方策検討を、委員会の課題として提起した。

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原一郎・資源エネルギー庁長官は18日、記者団のインタビューに応じ、エネルギー基本計画の見直しに関して、「福島事故を経て、色々な意見の広がり、新しい視点が出てきた」などと意義を述べた。

一方、今後の論点として、「足して2で割るようなものではないと思う」、委員らの発言も「消費者、産業界など、それぞれの視点・視座と結び付いており、1つの紙の上で議論できるものではない」などと、集約に向けての難しさをあらわにした。


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