学術会議が福島事故を総括 新知見の反映に後手 「政治家への助言、誰が??」

日本学術会議(会長=大西隆・東京大学院教授)は11月26日、東京・港区の講堂でシンポジウム「東京電力福島原子力発電所事故への科学者の役割と責任について」を開催した。約220名が参加した。

事故状況の説明や学術会議のこれまでの対応説明の後、原子力、化学、土木、機械、放射線医学、経済学の各分野から報告された。

原子力学会の対応を説明した田中知・同学会長は、事故以前の対応の不十分な点について、(1)外部事象への対応(津波の規模、構造物の浸水防止対策等)(2)全電源喪失に対する対策(3)安全目標の設定、安全規制と安全設計(4)アクシデント・マネジメント準備(5)水素爆発の可能性(6)安全研究活動──を挙げた。

また、「世界標準が日本になぜ取り入れられていなかったのか」と問題を投げかけ、(1)新しい知見を安全基準に反映させるプロセスが整備されていない(2)過去に安全と認定したものの安全性をさらに向上させる改善への抵抗が大きい──点を指摘した。

「事故時に蓄積された知見を当局等に提言し速やかに実行せしめることはできなかったのか?」との自問自答に対しては、(1)学術界として当局に提言できるシステム整備が十分でない(2)蓄積された知見を迅速に提供できる情報整理が十分でない──などと問題点を示した。

その後のパネル討論(=写真)では、石田寛人・原子力安全技術センター会長(旧科学技術庁事務次官)、城山英明・東京大学院法学政治学研究科教授、保坂直紀・読売新聞東京本社科学部次長らが意見交換した。石田氏は政策立案・実現には行政官の役割を強調。

議論を取りまとめた吉川弘之・元日本学術会議会長(元東京大学総長)は「可能性を提案する科学者と、政治家の意志決定に影響を与える科学者の役割が必要で、その間の連続性をつくることができるか、また誰がそれをやるのかが課題だ」とし、いずれにしても福島の復興に科学者がどう貢献できるかが問われている、と締めくくった。


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