仏露が原子力協力で共同宣言 第3世代炉、輸出基準に

仏国とロシアの両国政府は11月18日、原子力協力に関する共同宣言を公表した。既存炉のみならず、今後新たに建設する原子炉についても福島事故を教訓とした安全確保の優先を共通誓約とするほか、静的安全性を備えた第3世代炉を新規輸出炉の基準技術としなければならないと明言。ナトリウム冷却高速炉など第4世代炉についても、双方の研究機関が協力して開発ロードマップを策定していく。来春に大統領選挙を控えた仏国では、野党が既存炉の半数を止めるなどの脱原子力政策を打ち出しているが、同国の現政権は「可能な限り高い安全性を追求する原子力政策こそ最も責任ある判断」との姿勢を崩していない。

同宣言は第16回仏露政府間協議の場で決定されたもので、両国は5件の商業契約と原子力を含めた7件の合意文書に調印。幅広い分野で協力を促進する方針だ。原子力共同宣言には仏国のF.フィヨン首相とロシアのV.プーチン首相が署名(=写真)しており、「福島事故後の世界で両国の原子力協力は重要なステップだ」と強調している。

両国はまず、今後のエネルギー需要を持続可能な方法で賄い、温暖化防止に責任ある態度で臨むには原子力産業の発展が重要任務であると再確認。その競争力、供給保証性、低炭素性などの面で有利であることを共通認識とした。

次に原子力政策においては安全確保が最優先事項ということから、国際原子力機関(IAEA)が9月に採択した安全性向上のための行動計画案を歓迎。福島事故によってこの目的に向けた国際連携強化の必要性が実証されたと指摘した。同事故の教訓を受け入れつつ、両国は世界中で最高レベルの安全性を追求していくことで意見が一致。そうした要求を満たせる第3世代炉を、新たに輸出する基準設計としなければならないとしている。

また、安全基準の強化や安全上の良好事例、運転員の訓練、および事故の防止とその管理の重要性等に鑑み、両国は事故の早期通報に関する既存の国際メカニズムで改善の必要があると認識。1つ以上の国際事故管理・訓練センターの創設を提言したほか、関連の国際条約の機能強化、安全インフラ構築のために国際機関の相互レビューを定期的かつ体系的に実施する重要性も指摘した。

高速炉開発で共通ロードマップ策定へ

仏露両国の協力としては、双方の規制機関の連携や、運転会社である仏電力(EDF)とロスアトム社の戦略的な協力も一層促進していくと明言。仏原子力・代替エネルギー庁(CEA)とロスアトム社による研究開発協力の中では特に、将来も原子力設備を維持していくための第4世代原子炉開発が重要だとしており、新たな安全基準を満たすとともに競争力があり、廃棄物の排出量も最小限で管理が容易、環境にも優しいというナトリウム冷却高速炉開発のため、共通ロードマップを策定すると明記した。

このほか、企業間の協力も鋭意進めていく方針で、機器メーカーの仏アルストム社とアトムエネルゴマッシ社の合弁事業、仏アレバ社とロスアトム社の協力を強化。機器設計や燃料生産、廃棄物管理、第三国における安全支援協力でも相互に利益が得られる発展を追求していくとしている。


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