「共通の安全基準必要」 EUのストレステスト中間報告

欧州委員会(EC)は11月24日、福島事故から想定される事象への安全裕度再評価のため、欧州連合(EU)域内の商業炉143基で実施したストレステストの中間報告書を公表した。

稼働中原子炉を有する14か国の規制当局が、9月中旬までにECに提出した進捗状況を取りまとめたもの。原子力安全の共通基準を定める新たなEU立法の制定など、域内安全規制の枠組で一層強化する余地がある政策分野を特定している。

今後は、各国が年末までに提出する結果報告を来年1月から4月までピアレビューする。6月末を目処に最終報告書を欧州理事会に提出する計画だが、原子炉の立地から操業まで、EUレベルで共通の基本原則と安全要件、最小限の技術的基準を構想していく方針だ。

中間報告書では稼働中原子炉を持つEU加盟14か国に加えて、2009年末に最後の原子炉を閉鎖したリトアニア、および近隣のウクライナとスイスも同様のレポートをECに提供。独自の国内原子炉の安全性再評価を実施したロシアも、EUのピアレビュー参加には関心を示している。

ストレステストから得られた最初の教訓として、ECはさらなる改善活動が必要な分野を以下のように定めた。すなわち、(1)新たなEU立法によって、原子炉の立地から設計・建設、操業にいたるまで共通の基準を設定する。また、その条項に従って各国の原子力規制当局の独立性を高める(2)加盟各国は国境を越えた原子力リスク管理計画を策定し、緊急時に一層の備えを確保するとともに、それぞれの対応行動を調整する(3)原子力賠償について欧州としての対応を取り、被害者は居住国に関係なく同等の補償を得ることとする(4)EUの研究プログラムを原子力安全に集中させる――である。

全体的な印象としてECは「共通の手順で各国が実施合意したテストだったが、実際は書式も詳細さの度合いもバラバラだった」と指摘。特に地震リスクについては、国毎に様々な方法で評価されていたという。

このため、ECは最終報告書の作成に向けて、地震や洪水、極端な気象条件、電源喪失、冷却機能の喪失等に対する安全裕度の評価には詳細な共通体系を用いることで各国規制当局とも合意。炉心溶融など深刻な損傷を伴う過酷事故の管理については、特別に詳細な一章を設けるとしている。


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