メーカーの責任範囲限定 インドの原子力賠償法で新規則

インド原子力発電公社(NPCIL)の11月16日付け発表によると、同国の原子力損害賠償法で新たに制定された実施規則が同月11日に発効した。同法に規定された原子力機器供給業者の賠償責任の範囲を限定するなど、国外の原子炉メーカーが躊躇なくインドの原子力開発計画に参加できるよう考慮した抜け道的措置だが、メーカー側からは「十分ではない」との意見もあり、打開策となり得るかについては疑問視されている。

インドが昨年9月に制定した「原子力損害に関する民事責任法」では、欠陥のある設備や材質、標準以下のサービスなど供給業者の行為に起因する原子力事故の場合、運転事業者のNPCILは被害者への損害賠償実施後に、供給業者に対して賠償負担を求める権利を有するとしている。この求償権は世界的に認識されている原賠制度の基本的な原則と合致しないため、ウェスチングハウス社やGE日立社など、インドが必要とする原子力先進国のメーカーが同国との貿易取引に二の足を踏む最大要因となっている。

新規則では、第17条の事業者の求償権に関する説明として、事業者が実際に支払う賠償額(最大150億ルピー)を超えない額、または契約額を超えない額のいずれか少ない方になると規定。供給業者に求償できる期間についても、インド原子力法に基づいた規制当局の当初の認可期間である「5年間」か、事業者と供給業者が交わす契約の保証期間のうち、いずれか長い方に限定した。

しかし新規則は、被災した国民が事業者と供給業者間の契約に関わりなく、供給業者の不正行為について訴訟を起こすことを許した第46条に触れておらず、供給業者が無制限に賠償責任を負うリスクが残っている。

原子炉メーカー側としては、国際的な規範に基づき原子力損害の責任が事業者に限定されることを強く希望しているが、インドが署名済みの「原子力損害賠償に関する補完的基金条約(CSC)」では、その付属書の規定と一致する国内法を要求。インド人民党を始めとする野党は原賠法が外国企業寄りに希薄化されることに激しく反発していることから、シン首相率いる現政権がこれ以上同法を調整するのは難しいとの見方が有力だ。


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