高畠全国中学理科研会長が講演「生徒の判断力向上させたい」福島事故後のエネルギー・放射線教育

全国中学校理科教育研究会(全中理)会長の高畠勇二先生(東京・練馬区立開進第一中学校長=写真)が11月17日、東京・虎ノ門の日本原子力産業協会で開かれた原子力人材育成ネットワークの第1回「小中高校の放射線教育支援分科会」(主査=工藤和彦・九州大学東アジア環境研究機構)会合で、「中学校理科教育の現状とこれから──放射線を含むエネルギー教育の在り方」と題して講演した。

高畠氏は、2008年改定の学習指導要領に基づいて来年度から中学校の教科書が新しくなり、これまで削除されていた「放射線」の性質と利用についても触れることが求められるようになり、志ある教師は創意工夫をしながら、授業内容の準備をしてきたものの、3月11日の福島第一原子力発電所事故が発生し、多くの理科教師が「躊躇」していると指摘。原子力の副読本も、以前の「安全性強調」から「放射線をきちんと知ろう」という方針に変ったと、述べた。

中学校では、3年生の年間理科授業140時間のうち、12月ごろに4〜8時間が「エネルギー資源」の授業に充てられ、そのうち「放射線」は1〜2時間程度と思われ、決して多くの時間ではないことを説明した。

校長は授業をもっていないが、研究会の仲間と相談しながら、8時間コースのカリキュラムとして(1)現代社会の変容(2)電気の性質と発電体験(3)発電方法の比較(4)放射線測定(5)環境問題(6)エネルギー資源と最新技術──などの授業を計画していることを紹介した。

氏自身は、放射線教育をするに当たって、(1)科学技術としての将来性・有用性(2)エネルギー資源としての重要性(3)国策としての原子力発電を推進(自給率、安全保障などの観点から)──などの知識を身につけてもらいたいが、自分の世代は中学で放射線を学んだはずだがよく覚えておらず、いまの教師は自身が学習していないだけでなく、指導した経験もないのが実情だ、と指摘した。

その上、東日本大震災で、政府の施策、科学技術に対する信頼が損なわれ、社会では原子力発電所の廃止の声なども出てきて、エネルギー基本計画の見直しが進められており、「学習計画を立てる際の拠り所がなくなってしまったように感じる」と述べた。

しかしながら、このような状況の中だからこそ、「放射線に関する学習をしっかりと行う必要がある」と述べ、100年後を見据えて、これから策定される政府のエネルギー基本計画を評価できる資質・能力や科学技術のあり方について、意思決定できる資質・能力を子どもたちに育てたい、と強調した。


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