東電が事故調査報告 当事者として、事実を整理

東京電力は2日、福島原子力発電所事故の調査結果を当事者として初めて中間報告書の形で公表した。社内に調査委員会を設置し、事故の当事者として、これまでに得られた事実を整理、評価・検証するとともに、主に設備面の再発防止対策を検討し、取りまとめたもの。調査委員長を務めた山崎雅男副社長は同日の記者会見で、「これまでの原子力災害に対するリスク低減の取組みが至らず、作動が期待されていた機器類がほぼすべて機能を喪失した」などと、広範な原子力災害に至った要因とともに、改めて、被災地域に対する見舞いならびに陳謝の意を述べた。

今回の中間報告では、既に、IAEAに対する日本政府としての報告書にも盛り込まれた事故の発端となった大地震・津波の概況、事態進展の経緯・対応状況に加え、それらの分析を通じて導き出された技術的課題を踏まえ、炉心損傷防止のための対応方針、今後の原子力発電所の運転に活かすべき具体的対策を取りまとめている。

大地震発生後に来襲した史上稀な津波により、福島第一発電所は主要建屋設置エリアの全域が浸水、1〜6号機の交流電源は、6号機の非常用ディーゼル発電機1台を除きすべて喪失し、1、2、4号機では、交流電源喪失時に監視機能を確保する直流電源盤も被水、さらに、原子炉の除熱や各設備を冷却するために必要な冷却系もすべて被水し使用不可となったなどと、津波による設備の直接被害の状況を説明している。事故進展を踏まえた重要な機能の喪失に至る要因の相関を整理した上で、中間報告では、「事故は津波による浸水を起因として、多重の安全機能を同時に喪失したことによって発生しており、『長時間に及ぶ全交流電源と直流電源の同時喪失』と『長時間に及ぶ非常用海水系の除熱機能の喪失』がその要因」と分析した。

関連し、中間報告では、福島発電所の建設準備期から最近までの津波評価の経緯をまとめている。それによると、同所設置許可時(66〜72年)には、1960年のチリ地震津波による潮位を設計条件としていたが、02年の土木学会による技術規準刊行に伴い、再評価の上、対策を施した。一方、同年、国の地震調査研究推進本部による「三陸沖から房総沖海溝沿いのどこでもM8.2程度の地震が発生する可能性」との見解公表を受け、東京電力では、学会に具体的な波源モデルの策定について審議を依頼するなど、検討に努めていた。

東京電力では今後も、放射性物質の放出、人的リソース、情報公開等について、調査を継続し、順次公表していく考え。

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福島原子力発電所事故調査に関する中間報告書に対し、東京電力が社外有識者で構成する原子力安全・品質保証会議の「事故調査検証委員会」(委員長=矢川元基・東京大学名誉教授)が意見を出しており、同社は、合わせて公表。「過酷事故など起こり得ないという『安全神話』を生み、そこから抜け出せなかったこと」などを、事故の背景として指摘している。


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