原発コストは最安値 コスト検証委 30年でも最低水準

政府のエネルギー・環境会議の下に作られた「コスト等検証委員会」(委員長=石田勝之・内閣府副大臣)は12月19日、8回にわたる会合を経て、原子力発電をはじめとする各種電源の発電コストを、事故リスクや研究開発費・立地対策費などの政策経費、CO環境対策費用なども含めた幅広い角度から総合的に検証した報告書を取りまとめ、同21日に開かれた第5回エネ環境会議に報告し、了承された(=1面参照)。

原子力発電は福島第一原子力発電所事故に伴う除染費用など事故リスク対応費用が今後も増大する見通しだが、現在の損害額を下限値として5.8兆円と見積もった場合、モデルプラントの2010年発電コストは、1kWh当たり8.9円となり、全ての各種電源の中で最安値となった。また2030年モデルでも、最も発電条件の良い風力発電(陸上、洋上共)と肩を並べるものの、他の各種電源より安価であることが明らかとなった。

コスト試算結果は、最終的には来夏に政府がまとめる「革新的エネルギー・環境戦略」検討のベースの1つになるものだが、今後の総合資源エネルギー調査会や原子力委員会、中央環境審議会などでの検討で、長期の計画が必要な核燃料サイクルのあり方や、供給量の確保安定性やコストには反映されない国としての安全保障の道を、どのように確保するかが最大の焦点となる。

「減原発依存」を標榜する現民主党政権下で、地球温暖化防止対策までを含め総合的に考えて、エネルギー需給をどう構築し、国民生活にとって必要不可欠な電力エネルギーを、本当に「同時同量」安定的に供給できる体制を作ることができるかどうかが、いま問われている。

検証結果の2010年モデルの原子力発電コストは、04年試算の1kWh当たり5.9円から3円増加し8.9円(約51%増)となったものの、発電条件の良い地熱9.2円、石炭火力9.5円、立地条件の良い風力(陸上)の9.9円、一般水力10.6円、LNG火力10.7円、条件の良い太陽光(住宅用)33.4円と比べ、一番安くなっている。

原子力は前回試算1kWh当たり5.9円から、運転維持費などで1.4円、政策経費1.1円、事故リスク対応費用として最低でも0.5円として、計3円増加すると試算。ただし今後、損害額がさらに増大すれば、1兆円増加するごとに0.1円増加する。一方で、事故による損害額を国内の電力会社による「相互扶助方式」によって、40年間で積み立て、実際には事故が発生しなかった場合、事業者に返金されるとすると、事故リスクコストは「下限」ではなくなるのではないか、との指摘があったことを、追記した。

原子力、地熱発電、一般水力は2010年と2030年も同じ発電コストと見込んでおり、2030年には石炭やLNG火力との格差は、1.4円〜2円と拡大傾向をたどると見ている。原子力発電は、次世代軽水炉の開発で、建設工期の短縮などが見込まれるが、今回は定量的な変更は見込まなかった。

太陽光発電(住宅用)は10年の設置条件に恵まれた最低コストが33.4円で、技術革新や量産効果などで2030年には大幅にコストは低下するものの、9.9円〜20円の幅で、条件が良くても原子力よりまだ1円程度高いものにとどまると試算している。

諸外国とのコスト比較では、OECD/IEA試算を引用し、日本の全ての電源コストは諸外国の試算結果より高い。


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