巨大複合災害対策の強化を 事故調・中間報告 「冷却対策が不適切」

政府の福島原子力発電所事故調査・検証委員会(委員長=畑村洋太郎・東京大学名誉教授)は12月26日、中間報告を発表した。同委が6月の初回会合開催以降、現地視察、関係者ヒアリング等を通じ、事故・被害拡大の原因究明を行った調査・検証結果について取りまとめたもの。本編だけで約500ページにも及ぶが、調査の途中段階にあり、事実関係の解明が未了の事項もあることから、中間報告では、結び部分を「小括」として、(1)津波によるシビアアクシデント対策(2)複合災害の視点(3)全体像を見る視点――の欠如を問題点として指摘している。畑村委員長は同日官邸を訪れ野田佳彦首相に報告書を手渡した。

中間報告では、福島第一での事故後の対応については、津波到達後、1号機の全電源喪失時に機能不全に陥ったと考えられている非常用復水器(IC)に関して、現場では当初、正常に作動しているものと誤認し、適切な対応がなされなかったため、代替注水や格納容器ベントの実施までに時間を要し、炉心冷却の遅れにつながったなどと分析した上、「原子力事業者として極めて不適切」と戒めている。

また、被害拡大の防止対策上の問題点としては、SPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測システム)が、地震の影響で伝送回線が使用できなくなったため、地域住民の放射線被ばく防止や避難対応に活用されなかったことを問題視し、システム運用上の改善措置を講じる必要などを指摘したほか、住民避難の意思決定と現場の混乱を巡る問題にもつながったとしている。オフサイトセンターについても、大規模災害時に機能を維持できるよう整備を要求。

「小括」では、「複合災害という視点の欠如」、「全体像を見る視点の欠如」といった問題点と合わせて、巨大システムの災害対策に関する基本的な考え方のパラダイムの転換を訴えている。

委員会では1月末まで意見募集を行い、さらに調査・検証を進めた上で、今夏目途に最終報告を公表する予定だ。


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