FNCA大臣級会合 福島事故教訓に「安全強化で協力」 FNCAコーディネイター 町末男

細野大臣「世界の原子力利用の拡大には安全強化が共通の重要課題」

野田首相が福島原子力発電所事故について冷温停止が達成され、ステップ2が達成された事を発表した12月16日にアジア原子力協力フォーラム(FNCA)の大臣会合が東京で開かれた。会議は12か国から大臣級をはじめ海外から38人、我が国からは細野大臣、中塚副大臣、近藤原子力委員長、各原子力委員をはじめ多くの関係者が参加して熱心な討論が進められた。

細野豪志内閣府特命担当大臣(原子力行政)は開会の挨拶で、東北地方太平洋沖地震と津波の被害に対する各国の支援に対し感謝の意を表した上で、現在、原子炉の安定的な冷却を実現し、今日(12月16日)午後には冷温停止を報告出来るところまで来たこと、今後は除染や廃炉などオフサイトの対策に全力で取り組むことを述べられた。

さらに、原子力利用の拡大がアジア及び世界で計画されている中で、共通の重要課題である安全強化に取り組むためには、経験の共有や共同作業が効果的である事から、協力の枠組みであるFNCAの役割は一層重要になりつつあることを強調された。

福島事故後の各国は原子力発電計画の継続

各国の原子力政策に関する報告では、多くの国が安全を強化し原子力発電推進を継続するとの政策を明確にしている。

中国はすでに14基の原子力発電炉を運転中で27基を建設中であるが、これらの安全を確認した上で計画継続を決定したと述べている。

韓国も李明博大統領が9月の国連原子力安全会議で述べているように、今後も原子力発電を促進し、17年までに6基を新設するとしている。韓国は安全強化政策の1つとして11年10月に大統領直属の原子力安全委員会を設置し中立的に安全を審査する。

新たに原子力発電の導入が確定しているベトナム、バングラデッシュは、より厳格に安全を確認しつつ、計画を進めるとしている。ベトナムではニントゥアン省第1サイトはロシア、ニントゥアン省第2サイトは日本が協力のパートナーとして決まっている。バングラデッシュは最近ロシアの建設協力が決定し、取り決めが調印された事がオスマン科学技術大臣から報告された。

タイのスラスワディー科学技術大臣は福島第一原子力発電所事故によりタイの原子力発電計画の開始の決定を3年間延期する事にし、その間に最高レベルの安全基準と国民理解の確保に注力するとのべている。

インドネシア、マレーシア、フィリッピン、カザフスタンは福島原子力発電所事故による原子力発電政策の大きな変更は無いとしているが、原子力発電の安全性に対する国民の信頼度が大きく揺らいでいることを懸念しており、これに対応するために、マレーシアのファディラ・ユソフ科学技術革新副大臣、フィリッピンのモンテホ科学技術大臣などからFNCAの原子力広報の活動の再開が提案されている。

福島原子力事故の教訓を共有する

福島事故については特別セッションを設けて事故の教訓、原子力研究開発機構による除染の取組の現況と計画、事故についての国際的な発信について日本から説明した。

これらを踏まえて、今後さらに福島事故の教訓を共有し、FNCA各国の原子力施設において最高水準の安全を確保するように協力を強めることを決議した。

また、大臣級会合の翌日に各国代表は南相馬市での除染活動や原町火力発電所近くの津波と地震の被害状況を視察した。

持続的発展のために放射線利用プロジェクト成果の実用を加速

FNCAの全ての国が持続的発展のために、農業、工業、医療、環境の分野で放射線を利用することに努力しており、FNCAによる協力を活用している。

特にFNCAプロジェクトで、子宮頸ガンの放射線治療での生存率の高い新しい治療法の確立、放射線育種による耐病性バナナの新品種の開発、キトサンの放射線加工で得た植物成長促進剤による作物収穫の増加など、実用に役立つ成果が出ている事が注目された。円卓討議ではこの成果を更に利用者に移転し、持続的発展と福祉に効果的に役立てる事の重要性が議論され、それに向けて各国が行動することが決議された。さらに、新プロジェクトである「研究炉ネットワーク」によって医療用アイソトープの安定した製造と供給のための協力を確実に進める事が決議された。

核セキュリティ・核不拡散、原子力安全、人材養成など「基盤強化」で協力

原子力利用基盤整備の重要性を議題とした円卓討議では人材養成の強化、市民との双方向コミュニケーションの重要性、安全マネージメント・プロジェクトの推進が確認された。それに加えて、今年度から始まる「核セキュリティ・核不拡散プロジェクト」の重要性が認識され、プロジェクト活動を通して原子力安全、核セキュリティ、核不拡散の基盤構築に向けて協力を進める事が決議された事が注目される。

閉会セッションでは近藤原子力委員会委員長が採択された決議を紹介し、次回2012年の大臣級会合のホスト国としてインドネシアが承認された後、ハッタ・インドネシア研究技術大臣より挨拶があった。


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