不安煽る番組作りに抗議 NHK 低線量被ばく特集 ICRPも問題視

NHKが昨年12月末に放映した追跡!真相ファイル番組「低線量被ばく 揺らぐ国際基準」の内容について、原子力研究開発などに携わってきた原子力関係者110名が連名で、NHKの松本正之会長と西脇順一郎担当ディレクター宛に抗議文を12日に送付した。

抗議したのはエネルギー戦略研究会(金子熊夫会長)、日本原子力学会シニアネットワーク連絡会(宅間正夫会長)、エネルギー問題に発言する会(林勉代表幹事)のメンバーで、1月末までに回答を求めている。

同番組は12月28日の夜、総合テレビで放映され、国際的に放射線防護基準を策定している国際放射線防護委員会(ICRP)が低線量被ばくの身体的影響(発がん率)を過小評価しているのではないかと問題提起する内容。

ICRPのクリストファー・クレメント事務局長にもインタビューしており、総線量と単位時間当たりの線量率の違いを指摘し、広島・長崎の被ばくのように一度の大量被ばくの評価結果を、「低線量率・長時間」の被ばく影響に適用する場合には、「DDREF」(線量・線量率効果係数)を適用し補正を行うのが常識になっているが、同事務局長が指摘したのは線量・線量率効果係数(DDREF)についての不確実性を言ったものであるのに対して、抗議文によると、番組ではそれを「リスクを低く見ているかのごとく意図的に意味が全く異なったものにすり替えてしまっている」と非難している。

抗議文ではNHKに対して、「一般視聴者に放射線の恐怖のみを煽るような“風評加害者”的報道は今後止めるよう強く要望する」としている。

また抗議文では、今後、福島の地で除染が進み、「20ミリSv未満の避難指示解除区域になったら避難先から帰ろうと考えている福島県の住民自身を一層不安に陥れ、復帰を断念させることをたいへん危惧している」と述べると共に、「放射線への恐怖が、医療現場での放射線診断を拒否し手遅れになるという可能性もある」と指摘している。

ICRPの日本側関係者も同番組内容を問題視しており、具体的な行動を検討している。


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