技術能力持つ規制プロを 社会技術研究会 専門分化の弊害懸念

社会技術研究会は1月28日、第8回社会技術研究シンポジウム「福島第一原子力発電所事故と社会技術」を東京大学で開催(=写真)した。

片田敏孝・群馬大学大学院社会環境デザイン工学専攻災害社会工学研究室教授/広域首都圏防災研究センター長による「釜石市における津波防災に関する社会技術の実践」の基調講演では、防災教育に携わってきた中で「想定にとらわれすぎた防災」の危険性を強調した。

堀井秀之・東京大学工学系研究科社会基盤学科社会基盤学専攻教授は、「東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会(政府事故調)中間報告について」の基調講演で、津波・シビアアクシデント対策が十分でなかったのは(1)自主保安の限界(2)規制関係機関の態勢の不十分さ(3)専門分化・分業の弊害(4)リスク情報提示の難しさ――を主な要因として提起した。

田中知・東京大学大学院工学系研究科原子力国際専攻教授は、「東京電力福島第一原子力発電所事故を踏まえた原子力教育研究の再考」の基調講演で、専門・俯瞰的工学知と高度な社会リテラシーを兼ね備えた技術専門家の育成が重要であるとした。

また、研究発表セッションも行われ、山口陽央・東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻は「韓国における放射性廃棄物処分場立地過程の政治過程分析」で、韓国での低レベル放射性(LILW)廃棄物処分場の立地が慶州市に決定した経緯を追いながらその要因を探った。決定までの失敗を繰り返す中で原因を解消する政策が段階的に整備され、扶安(プアン)での大きな紛争を経て政策的アジェンダの優先順位が上がっていった。このような政治的環境が抜本的な政策転換を可能にし、住民が受容できる条件が整ってきたことが要因だとした。

最後に、尾本彰・東京大学特任教授、佐々木宜彦・発電設備技術検査協会理事長、城山英明・東京大学教授、柘植綾夫・芝浦工業大学学長/日本工学会会長が、パネルディスカッションを行った。技術が複雑化してシステム全体を俯瞰できる人材がいなくなってしまう「専門分化・分業の弊害」「規制行政の強化」について議論した。それぞれ「技術的能力を持つ規制のプロの育成を。社会にもリスクリテラシーが必要」「法制度を変えても結局は運用の問題がある。規制自体の自己目的化は避けたい」などの意見が出された。


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