既存炉の運転延長勧告 仏政府、長期エネ政策で報告書

仏国の経済・財政・産業省は9日、同国の2050年までの長期的なエネルギー政策に関する報告書を公表し、40年とされている国内原子炉の運転期間延長は経済的にも環境影響的にも最も望ましいシナリオであるとの結論を明らかにした。

仏国では運開後30数年が経過した古い原子炉2基に対し、安全当局が昨年までに条件付きで40年間の運転を認可。福島原発のように高経年化が事故原因の1つとなる可能性について懸念する声が高まっている。今年4月の大統領選挙に先立ち実施された候補者投票では、2025年までに原子力の発電シェアを50%まで下げることを提案する社会党のF.オランド候補が原子力積極推進派の現職N.サルコジ大統領をリードしていることから、原子力の優位性を示唆する同報告書は同大統領の再選に有利に働くと見られている。

この報告書は経済省のE.ベソン大臣付エネルギー担当相が昨年10月、8名の専門家で構成される諮問委員会に要請して取りまとめられた。80以上の関係機関から意見を聴取しつつ、すべてのエネルギー源を網羅した2050年までの電力供給シナリオを分析。特に、(1)既存原子炉の運転期間を40年以上に延長(2)既存炉から第3、第4世代炉への移行を加速(3)原子力発電シェアを段階的に縮小(4)完全に脱原子力し、再生可能エネルギー等でリプレース――の4オプションを検討しており、来年には最終版を議会に提出予定となっている。

方法としては、欧州や国際的な規模でこれまでに公表されたエネルギー予測に関するシナリオなどをレビュー。コストに関する情報は、フィヨン首相の要請により監査院が1月末に発表した報告書に基づくとしている。監査院はその中で、「2022年までに22基の原子炉が運開後40年を迎えるため、運転年数を40年に制限した場合、現在のレベルの原子力発電量を維持するにはその年までに11基の欧州加圧水型炉(EPR)建設が必要」との分析結果を提示。

これに加えて今回の報告書は、完全な脱原発シナリオにより発電コストが上昇し、代替電源への投資決定が直ちに必要になることや、国内原子力産業が衰退する可能性を指摘した。結論として同報告書は「再生可能エネルギーの開発と並行した原子力発電の基盤維持が仏国にとって最良のエネルギー政策」と断言。福島後の対策も含めて運転期間延長に要するコストはkW当たり1000ユーロ以下であり、既存炉の運転期間は安全当局の保証に基づき40年以上に延長すべきだとしたほか、古い炉の閉鎖に合わせ少数のEPRを発電可能にするよう勧告している。

また、現在フラマンビル原子力発電所で建設中のEPRに続いて、パンリーで検討中のEPR建設も価値あるプロジェクトとして継続確認されるべきだと強調した。


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