福島直後の議事録公開 早い段階で炉心損傷を察知 米原子力規制委

福島第一原発事故直後に米原子力規制委員会(NRC)内部で交わされたすべての連絡内容の議事録が2月21日に公開された。日本から正確な情報が得られないなかで在日米国民を確実に待避させるとともに、一刻も早く事故影響を緩和する方策についてG・ヤツコ委員長(=写真)を中心とするNRCスタッフが連日白熱した議論を展開。早い段階で炉心損傷の可能性に言及し、直ちに効果的な冷却手段を取るべく検討を開始していた点が印象的だ。

同文書はウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙、国際環境保護団体の「地球の友」(FOE)が情報公開法に基づき昨年末に開示を求めたことによるもの。3月11日から10日間の電話会議からメール連絡までの全記録を収めた資料で合計3000頁以上に及ぶ。

NRC幹部は事故直後、専門家2名を東京に派遣する一方、メディア報道以外で信頼できる情報を得る術がないことにいらだちながらも、日本の保安院と直接コンタクトする方法を模索。東京電力や世界原子力発電事業者協会などを通じた情報に基づき、12日の段階で1号機・格納容器のベントによりサイトでセシウムとヨウ素が検出されたことから、冷却水の水位が放射化した燃料棒上端より下になった可能性、および炉心損傷という最悪のシナリオを察知。発電所の半径50マイルに避難勧告を出すべきだと協議していた。

また、15日時点では4号機の水素ガス爆発に伴う火災の収束方法を検討しており、日本側には劣化した使用済み燃料プールの冷却機能維持は難しいと断言。スタッフの1人は燃料プールへの注水支援に米軍を動員する可能性を提案している。

16日には、4号機の火災によりプール壁が破壊され、冷却水が完全に失われたと判断。ヘリコプターで水と砂を投入すべきだとの案が出された。

さらに、日本での避難勧告が12マイル(約20キロメートル)であったことから、50マイル勧告の妥当性についても議論。ヤツコ委員長は3つの原子炉でメルトダウンの可能性があるほか、劣化した使用済み燃料プール6つで火災発生の可能性があるため、破壊された格納容器からの放射性物質放出を抑えるのは難しいとの考えを示していた。

なお、WSJ紙は議事録の公開請求に際し、同事故と米国の原子力政策および安全性との関わり合いに対する大衆の関心の高さに言及した。

一方FOEは、NRCの事故対応のほかに、NRCの構成や反原子力寄りの見解を持つヤツコ委員長の委員長権限に対する変更提案、委員達の個人的な行動に強い関心を示しており、NRCが事故時の対応の中で政治的、あるいは原子力産業界からの圧力を受けたか否かの解明を希望。米国民の健康や安全、環境、セキュリティ防護の機関であるNRCに完全に独立的立場を求めるとともに、委員長以外の委員が外部圧力により対応を遅らせた可能性についても見極めたいとしていた。

同文書の閲覧はhttp://www.nrc.gov/reading−rm/foia/japan−foia−info/2012/で。


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