6月までに出資契約締結 バルト3国首相が合意 リトアニアのビサギナス原発計画

リトアニアが閉鎖原発の隣接区域で進めているビサギナス原子力発電所建設計画について、パートナー国となるラトビア、エストニアを交えたバルト三国の首相は8日、昨年11月の三者会談以降の同プロジェクトの進展状況を歓迎するとともに、今後も一致協力してこれを成功させるとした合意文書に署名した。

同計画の最大課題である約60億ユーロと言われる資金の調達について、6月までにバルト三国それぞれの投資持分に関する交渉を完了することを確認したもので、同計画の実施主体であるリトアニアのビサギナス原子力発電会社(VAE)に加えて、ラトビアとエストニアの主要エネルギー企業による参加を支援。昨年12月に同計画からの撤退を表明したポーランドに対しても、「機会はそのまま維持されている」として再参加を促している。

また、リトアニアの欧州連合(EU)加盟と引き替えに、同国唯一のイグナリナ原子力発電所を閉鎖させた欧州委員会(EC)に対しては、引き続き財政支援を要請する内容だ。

この合意文書は、リトアニアのA.クビリウス首相、ラトビアのV.ドムブロフスキス首相およびエストニアのA.アンシプ首相が非公式会合の結果として公表。同計画に130万kW級のABWRを提案し、出資を伴う受注優先交渉権を得た日立製作所、およびECの代表者も同席した。

主な確認合意事項は以下の4点。すなわち、(1)三国のエネルギー供給保証のためビサギナス原発計画を推進する(2)VAE社、エストニアのエスティ・エネルギア社およびラトビア国営のラトブエネルゴ社の参加を支援(3)本計画を次の段階に進めるべく、これらの企業が時機を逃さず交渉を終結させ、2012年6月までに利権契約への署名が完了するよう奨励する(4)ユーラトム協定の要件に基づきECから肯定的見解、および欧州の金融機関から財政支援が得られることを期待する。

バルト三国には、ロシア帝国時代から旧ソ連崩壊に至るまでロシアに併合されていたという歴史的経緯があり、同国からの輸入エネルギー依存脱却の切り札となるビサギナス原発計画は同地域にとって政治的にも重要な位置付け。ポーランドも同様の理由によりロシア以外の国との協力で原発建設を目指しているが、投資回収率等を精査した結果、国内で自前の原子炉を建設する計画を優先したと見られている。

なお、これらの地域ではロシアもまた、周辺諸国への電力輸出を念頭に置いたバルチック原発建設計画を推進中。リトアニアとポーランドに挟まれた飛び地のサイトでは、すでに2月にコンクリート打設が実施されており、ビサギナス原発より先に完成する公算が大きい。バルト三国はビサギナス原発への電力需要を高める目的で、同地域の電力市場と北欧4か国の国際電力取引市場「ノルド・プール」との統合計画を進めているが、ロシア原発の存在によりビサギナス原発の電力価格競争力が損なわれる可能性があり、その動静には神経を尖らせている。


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