事業者が控訴する方針 スイス原発の運転期間制限裁定で

スイスのミューレベルク原子力発電所(BWR、39万kW)を操業するBKW社は14日、同発電所の運転期間を2013年6月28日までとした連邦行政裁判所(FAC)の裁定を不服とし、ローザンヌの連邦裁判所に控訴する方針を明らかにした。

同発電所の「炉心シュラウドにひびがある」として巨大地震発生時の冷却能力を疑問視する反対派住民の提訴を受け、FACは今月1日、運開後50年目の2022年までとされていた同発電所の運転期限を最大で13年の半ばまでに制限する判断を下したほか、BKW社に対しては、同発電所の長期的な運転に関する包括的な保守点検コンセプトを新たな運転認可延長申請書とともに環境運輸エネルギー通信省(DETEC)に提出するよう指示していた。

これに対してBKW社は、同社がすでに昨年から同発電所の運転継続に向けた包括的な改修・保守点検コンセプト作成に取りかかっており、昨年8月の段階で最初の改修計画案をスイス連邦原子力安全検査局(ENSI)に提出していた事実に言及。今年の夏までには1つのコンセプトにまとめて再提出する予定だとしている。FACの裁定に伴い、同社は今後、上訴が連邦裁判所で審理されている間、同コンセプトを暫定的にDETECに提出する。また、同発電所が1000年に1回という巨大地震とそれに伴う冷却設備の故障にも耐えうる証拠を今月末までに提示する方針である。

炉心シュラウドの健全性に関しては、BKW社は同発電所の運転継続を前提に、追加の安定化策を昨年末にENSIに提出済みだと指摘。既存の高張力支持ロッド4本を取り替えるとともに新たに2本追加するとしており、現在ENSIの審査を受けているところだ。

また、BKW社が実施した地震対策に関する調査および計算によると、同発電所の耐震性は冷却設備に関する適切な指針に基づく最新の地震リスク評価に準拠。ただし、新たな認可手続き等を考慮し同社では今後も機会ある毎に同発電所を一層補強していくとしている。

同社はさらに、既存のアーレ川による冷却システムとは別に、小型冷却器を備えた代替ヒートシンクとなる緊急棟「SUSAN」の要件について、改修計画案の1つを昨年8月にENSIに提出した。追加の改修計画案もその後練り上げており、追加の貯水タンクを発電所上部に設置したり、ザーネ川からSUSAN棟まで地下パイプ・ラインを引く可能性について調査中。BKW社では今後数か月間のうちに、これらの改修計画案をまとめ上げ、同発電所の運転継続コンセプトと統合し、今年の夏を目処にENSIおよびDETECに提出することになる。

なお、早期閉鎖による財政的および技術的な影響についてBKW社は、「年間30億kWh程度の電力を市場から購入しなければならなくなる」と指摘。発電所資産や機器の貸借対照表上の減価償却資産額が昨年末時点で約4億スイスフランにのぼるのに加え、廃止措置および放射性廃棄物処分の準備費として2億フラン、そのための基金に対しては4億5000万フランが必要との試算結果を示した。また、現在の電力市場価格や長期投資の償却などを勘案すると営業利益の減額は年間5000万フランになると見込まれると強調している。


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