国会事故調 東電元副社長ら聴取 原災法従い首相へ説明

国会の東京電力福島原子力発電所事故調査委員会(委員長=黒川清・元日本学術会議会長)が3月28日、第8回会合を参議院議員会館で開き、武黒一郎・東京電力フェロー(=30日退任、元副社長)と広瀬研吉・元原子力安全・保安院長(元原子力安全委員会事務局長)から、当時の事故対応や原子力安全行政についての考えを聞いた。

昨年3月の事故発生当日を振り返り、武黒氏は「地震の揺れが収まってから、本社2階に非常災害対策室を設けた。そこで首相官邸から技術の分かる者を派遣して欲しいと言われ、16時から17時の間ごろに行った。15日昼まで基本的に官邸にいた」と行動のあらましを述べた。

東電からの事故情報はどのように得ていたかを問われた武黒氏は、「11日、12日は地下の中2階にある5〜6名の入れる小部屋にいた。電話も通じず、原子力安全・保安院からの情報がときどき入ってきた。しかたなく、東電からの人間を使って情報伝達することにした」と述懐した。

事故による格納容器の異常圧力を下げるため、蒸気を水に通した後に排気筒から大気に放出するベントについては、「ベントが必要になることは、皆の共通認識だったと思う」と述べ、海水注入については、「12日の海水注入のとき、初めて福島原発と直接連絡をとった。1号機の水素爆発の影響でやり直さなければならず、20時以降になるだろうと理解していた」と語った。

当時の菅直人首相からは、再臨界の可能性、再臨界を防止するボロン注入、それらの準備状況などについて質問があり、一時休息に入った、と当時の状況を説明。「海水は不純物が多いので、再臨界の心配はないと考えていた」と述べる一方で、「首相への説明が終わっていなかったので、現場が(海水注入を)先行して、将来の妨げになってはいけないと考え、一旦中断し、すぐに再開すべきと思っていた」、「原子力災害対策特別措置法(原災法)上の最高責任者は総理であり、総理の理解は必要と考えていた」と説明したが、「いま思えば、現場の所長に迷惑をかけ、たいへん申し訳なく思っている」と付け加えた。

本店に戻った15日朝以降は、「オペレーションルームで、(体調を崩した清水)社長に代って取りまとめを行っていた」とした。

広瀬研吉氏は経産省の原子力安全・保安院長と原子力安全委員会事務局長を共に歴任し、核燃料加工会社のジェー・シー・オー(JCO)で1999年9月に臨界事故が発生したときには旧科学技術庁の原子力安全課長を務めていた。

広瀬氏は、安全委事務局長時代は原子力施設の耐震安全の強化に、保安院長時代には運転段階の安全確保対策に取り組んできた、と説明した。

福島事故の初期の段階では、「原子力安全委員会も保安院も、原子力発電所で何が起こっているのか、十分な情報がなく、的確に判断ができなかったのではないか」と述べた。事故後、4月に入って、放射性物質の大量放出評価が明らかになったことから、内閣府参与として国際原子力事故尺度(INES)を「レベル5」から「レベル7」に上げることを判断し、「世界にも状況を把握してもらうためにもレベル7の判断が必要だと考えていた」と説明した。

炉心溶融などの過酷事故対策について、法律で規制するのが世界的趨勢だったのではないかとの問いに対して広瀬氏は、「法令化への認識はあったが、対応が十分でなかった。機会があれば法令上の要求にすることが重要だと思っていた」と述べた。

新しい知見に基づいて、設備の現状を事業者が自主的に見直すバックチェックと法的強制力をもって改善するバックフィットの対策の選択については、「新設炉と既設炉を分けて対応することにした。事業者が立地状況、施設の現状などを踏まえて(バックチェックとして)適切に対応していくべきだと考えた」と説明した。

国際原子力機関(IAEA)が示した新たな防災対策を国内に取り入れるかどうかの検討経過について広瀬氏は、「いままでは8〜10キロメートルの対策範囲で十分と考えてきたが、福島事故を考えると十分だったとは言えない」とした。事故調の委員から「今回の事故は、起こりえない事故として規定してきた仮想事故の約1万倍の放射能が環境に放出された。この放出量を設定すると、対策範囲はどの位となるか」との問いには、「今回は半径30キロメートルが避難に必要な範囲だ」と答えた。

対策範囲拡大の検討については、「私自身は慎重な検討を要請したいと考えていた」と基本的な考え方を示し、「地元理解が重要であり、新しい国際基準についてもよく調査検討し、実現可能性を検証すべきだ」との主張をもっていたことを明らかにした。

保安院の今までのあり方について広瀬氏は、「書類の整理にかなり大きな比重を占めるようになってきたことが、私の大きな反省点だ。現物に戻り、現場で常に確認していくことから、少し離れてしまった」と振り返った。


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