細野原発相 改善へ事業者責任強調 規制庁早期発足に意欲

東京電力福島第一原発事故を受け、我が国はあらゆる面で岐路に立っているのは間違いない。この事態を乗越えるには、政府および事業者が今回の事故を真摯に反省し、懸命に努力していかなければならない。

今回の事故によって、政府や東京電力はもちろん、原子力関係者全体が非常に厳しい批判に晒されている。全電源喪失を想定していなかったことを官民ともに許容してきた点に象徴されるように、国際的な最新の知見を十分取り入れず、内向きな、いわゆる「安全神話」に陥ってしまっていたことは否定できない。

規制側も推進側も、官民問わず求められているのは、国のため、人々のための原子力とは何かを改めて根本から考え直し、原子力関連施設の安全な管理・運営に全力を尽くすことではないか。

この会場にも実際に対応に関わられた関係者も多くいると思うが、事故発生以来、我が国は、政府と関係企業、産業界が団結し、国家の総力を挙げて事故の収束に尽力してきた。特に、想像を絶する過酷な環境の中での現場作業員の方々の必死の奮闘により、当初は想像もできなかった早さで収束の取組を進めてこられた。この場を借りて、現場作業員の皆さんに深く敬意と感謝の意を改めて表したい。

事故発災当初、対応は困難を極め、特に3月14日、3号機の水素爆発は、私にとって人生最悪の瞬間として鮮明に覚えている。その後も、使用済燃料プールへの注水をどうするか、頭を悩ませた。去年のちょうど今頃は、まさに高レベル放射性汚染水への対策をどうするか、奔走していたころだ。

政府、東京電力、メーカー、関係企業が一体となって踏ん張り、また米国やフランスなど諸外国の協力も得て、安定化に向けた歩みを一歩一歩進めることができた。こうした取組の1つの大きな節目が、昨年12月の「冷温停止状態」の達成であったと考えている。

現在、オンサイトでは廃炉に向けた中長期措置を着実に進めている。破損した燃料や使用済み燃料の取出しなど、技術的にも極めてチャレンジングな課題が山積しており、また今後も小さなトラブルが発生することは想定しなければならない。

またオフサイトでは、「冷温停止状態」宣言を受けて、実際に避難区域を縮小し始めたところだ。すでに帰還の取組を開始した市町村も出てきているが、住民には、帰る返らないかの選択の権利がある。

今後の大きな課題は除染だ。これほどの規模の除染に取り組んだ国はない。事故を防げなかった政府として、住民の方々にはできる限り元の生活を取り戻していただける環境を整える責任がある。除染と並んで、賠償や健康の問題も含め、政府として全力で取り組む覚悟だ。

福島事故を受けて我が国では、原子力規制組織・制度の改革に取り組み、世界最高水準の安全規制を導入する。

防災体制の強化の必要性も強く問われた。平時より政府、地方公共団体、事業者の危機管理体制の実効性を高め、これを維持する。

これまで、事業者と規制機関の間には、双方において、「規制を守ってさえいれば良い」、「規制を守らせてさえいれば良い」という風土があったのではないだろうか。結果として、規制を守っているから安全であるという「安全神話」にとらわれ、常に進歩し続けている技術に目を向けず、新しい知見を積極的に取り入れることを怠ってしまった点は、今回の改革で徹底的に改めるべき点であると考える。

我が国の原子力政策の基本方針を定める原子力政策大綱についても原子力委員会において見直しが進められており、本年夏頃のとりまとめを目途に議論が進められている。特に、今後の核燃料サイクルについては、小委員会で、基礎的なデータと論点の整理が進められている。国際社会で原発の新規導入の動きが続いていることを踏まえ、核不拡散の問題など、内向きになるのではなく世界を見据えた視点が必要だ。

有識者からは、グローバルな核燃料供給体制の安定化に対する我が国の貢献や、高速炉を含めたバックエンド全般に関する国際的な議論への具体的な関与を展望すべきとする指摘もある。

今回の事故は、我が国の歴史に残る大災害だった。この事故を二度と繰り返さないために、政府は責任を持って、原子力の安全確保に向けた基盤を抜本的に強化する。事業者にはこれに応え、常に安全性を高めていく不断の努力を進めていただくことを強く期待する。


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