シェドロビツキー氏 今後の原子力、建設的判断を期待

技術的な事故が起きると、これを感情的に受け止める向きがある一方、客観的なデータを受け止めるというレベルがある。福島の事故原因は技術なものではなく自然災害によるものだった。放射能影響もマスコミの伝える規模は現実と違うと専門家は知っているし、福島原発周辺に居住している場合でも健康への脅威は全くないと言っていい。

昨年今年と、いくつかの国が脱原子力や新規建設モラトリアムを宣言したのは、社会的、心理的な現実というファクターが働いたせい。そして、原子力発電国のすべてが安全基準を厳しくしたが、これにより原子力の発電コストは上昇し、業界の規模が縮小、廃棄物処理など燃料サイクルコストの電力料金上乗せなどとも相まって、原子力は経済的な競争力を失うことになるかもしれない。

2000年代初期には原子力ルネッサンスという概念が生じたが、近年、再生可能エネルギーの競争力が随分向上しており、原子力の経済性が確保できなければ、原子力ルネッサンスは始まらずに終わるかもしれない。

安全性とともに経済性を向上するには発電所のライフサイクル管理という新たな方法論が必要だ。福島における一連の重要事態の原因にはこうしたアプローチの欠如が挙げられる。新しい原子炉と古い炉では要求される安全対策も当然別物であり、所員の訓練レベルも再評価の必要がある。

原子炉の新設をやめてはならない。やめれば古い炉の閉鎖により、原子力は縮小の一途を辿るほかなく、経済的な圧力となって市場の産業や企業に悪影響を及ぼす。ロシアは国内外を問わず原子炉の建設を続けているし、今後も世界中で続けていく。新規導入国には安全確保の方法から法的基盤やインフラの整備、人材養成など包括的サービスを提供する方針だ。

また、困難な日々を送っている日本の産業界や政府の方々を心から支援していく考え。日本の皆さんが熟慮を重ねた建設的な判断を下し、感情だけに左右されず客観的な評価に立って、今後の原子力利用の発展を全体的な考慮に基づき、位置付けと役割を決めていかれることを期待する。


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