バーバラ・ジャッジ・英原子力公社(UKAEA)名誉会長

今後の世界人口増加に伴うエネルギー供給の問題に取り組むために、多くの国が、エネルギー・セキュリティ、エネルギー面での自立、気候変動――の問題に直面する。原子力は、それぞれの国のニーズと事情に合わせたベースロード電源になり得る上、国内で自立したエネルギー源を確保でき、発電に伴うCO排出もほとんどないことから、多数の国のエネルギー・ミックスに組み込まれて当然だ。

それぞれの国において現時点で原子力発電を設置するかどうかを判断する上で考慮すべき政策課題がある。(1)政治=原子力は政治的なもので、政権存続の手段として使われることも多い(2)計画立案=原子力発電所の適切な立地が最も重要である(3)人材育成=核科学や物理学に精通したスタッフや原子炉運転技術者が不足しており、この問題に取り組む必要がある(4)資金確保=原子力発電所は高価な上に融資期間も長期を要し、資金調達が難しい(5)メディア=原子力についての良いニュースでは新聞が売れない(6)廃棄物=最終処分法は深地層処分と考えられているが、サイトが選定され完成するまでは、サイト内貯蔵が実施されるだろう。

原子力はエネルギー問題解決の回答そのものとはならないが、回答の主要な一部であると考える。世界は多様なエネルギー源を必要としており、石油、ガス、石炭、再生可能エネルギーも、原子力も必要である。それら全てがなければ、遅かれ早かれ直面せざるを得ない難しいエネルギー問題に対処できなくなる。将来我々がどのような国に住みたいのかよく考えていくべきである。


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