シュテファン・ニーセン・アレバドイツ社研究&イノベーション事業本部長

福島第一発電所の事故はハイテクの国である日本で起こった事象としてドイツにも大きな影響を与えた。ドイツのメディアは他国に比べて特に原子力面に焦点を当てて報道していた。ドイツ国内では数日でガイガーカウンターが売り切れた。

福島事故を受けてドイツ政府は国内原子力発電プラント半数の即時閉鎖を決定した。その背景には、1998年の電力市場自由化、1991年以降の政府補助金による再生エネルギーのゼロコスト化、欧州送電網の統合による他国からの電力輸入、好調なドイツ国内経済、感情的なメディアの影響力などがある。

ドイツは新エネルギー政策として、高電圧送電線建設、ロシアとドイツ国内を結ぶパイプライン建設によるガスインフラ拡張、再生可能エネルギーへの補助金の継続を挙げている。運転中の原子力発電プラントの閉鎖プログラムと太陽光への補助金を減額する方策をすでに実施しているが、系統運用者の課題が急増し、電気事業者が経済的な問題を抱える結果となった。一方、ドイツ隣国のポーランドとチェコでは原子力発電所の建設準備中であり、ドイツ国内では冬の寒い時期でも停電はしなかった。いろいろな議論はあるが、共通するコンセンサスは法制度がこれだけでは不十分であるということだ。

様々な電力供給システムの再編に向けたマスタープランはまだない。グリッド建設推進方策の実施、変動する再生可能エネルギーやエネルギー貯蔵を補う発電設備の建設を可能とするマーケットの創出など多くの課題を抱えている。


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