竹内敬二・朝日新聞編集委員

福島第一原子力発電所事故は取り返しのつかない事故であり、世論調査でも多くの人が原子力発電に反対している。もし日本で電力市場が自由化されていたとしたら事故後に東京電力は多くの顧客を失っていたはずだ。

現在、日本の原子力発電所のほとんどが停止しているのは消費者の意思が反映されている。こうした市民の意識を原子力政策に生かしていく制度が必要だ。

今後のエネルギー・原子力政策では、(1)原子力発電所の数を大きく減らす(2)再生可能エネルギーを増加させる(3)電力制度の自由化を進める――この3点を同時に進めていかなければならない。

夏を前にして、原子力発電所の再稼働が大きな問題になっている。しかし、まだ事故の起きたプロセスについての技術的検証がなされたとは言えず、安全性の担保ができていない。

今回の事故を解明するために様々な事故検証委員会が調査を進めているが、どれも原子力ムラを外したメンバー構成になっている。原産協会は、メーカーや学会などの力を集結させ、原子力のプロによる専門的な技術的検証を行うべきではないか。それなくして再稼働を主張しても、納得されないだろう。

ドイツは脱原子力を実現させるために約30年かかっている。今のところ日本の脱原子力へのパワーは非力である。しかし実際に事故が起こった日本ではもっと早く事が進んでもおかしくない。将来はどんなエネルギーで暮らしていくのか考えるべき時ではないか。


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