リトアニアの新設計画 事業権付与契約案を内閣が承認 総工費約5200億円

リトアニア政府は9日、ビサギナス原子力発電所建設計画における戦略的投資家として日立製作所、同国のプロジェクト会社、および同国政府の3者間の取り決め等を定めた事業権付与契約案を内閣が承認したと発表した。今国会の承認後、夏にも正式決定すると見られており、2020年末から22年末までの完成を目指す建設計画はまた一歩、前進したことになる。

同国の経済相によると、建設計画への投資額は同国でも最大規模の173億リタス(約5173億円)に達する見通しで、このうち100億〜140億リタス(3000億〜4200億円)が外国企業からの直接投資分。すなわち、最大シェアの60〜70%を日本の国際協力銀行(JBIC)から借り入れるとしている。

また、契約書案によると、プロジェクト会社の当初の所有比率はリトアニアの事業会社が38%となるほか、日立とラトビアの国営企業が各20%、エストニアの企業が22%となる予定。目標として、遅くとも15年7月末までに建設・運転許可を取得し、16年7月末までに最初のコンクリート打設を実施することが盛り込まれている。

リトアニアは欧州連合への加盟と引き替えに、唯一の原発だったイグナリナ発電所を2009年末に完全閉鎖したが、エネルギーの自給という国家的な戦略目標達成のため、同原発の隣接区域にビサギナス原発の建設を計画。2011年7月に、出資を伴う受注優先交渉企業として出力135万kWのABWRを提案する日立製作所を選定した。最大の課題は建設費の資金調達問題で、政府は事業パートナーであるバルト3国の2国を交えた協議を続けていた。

経済相は発電所の建設段階で50億リタス(約1500億円)相当の契約を地元企業に発注する方針で、これにより6000名分の新規雇用創出が期待できると指摘。また、ひとたび原発が完成すれば、リトアニア全体の経済規模は年間少なくとも7億リタスの拡大が見込まれ、これは同国の年間国内総生産(GDP)の約0.7%に相当するとしている。

なおリトアニア内閣は今回、西欧地域の電力網と接続するための法案も承認。同国にとって新たな原発は国内に安価な電力供給源を保証するだけでなく、競争力のある価格で輸出するという重要な役割を担う。このため、バルト三国と欧州の電力市場の連結は原発の完成とともに不可欠の前提条件だと強調している。


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