米英の原子力規制官が見解 規制の在り方について

4月の第45回原産年次大会では、米英から規制当局のキー・パーソンがパネリストとして参加した。

米原子力規制委員会(NRC)のW.マグウッド委員は大会後に記者会見し、福島事故時に重要だと指摘されていた免震棟やベントの設置で対策が完了しないうちに原子炉再稼働の政治判断が下されたことについて次のように述べた。

「国毎に状況への対応は異なる。米国では将来的に強化ベント設置が必要と思われる原子炉でも、マークT、U型の格納容器付きBWRを除き、合理的と判断されれば稼働を続けている。フィルター付きベントに関しては夏の中旬から終わり頃にかけて意志決定する予定。免震棟を各発電所に要求をすることはまだ考えておらず、対策の適用で日米には違いがある」。

―日本では住民避難の計画なしに再稼働の議論が進んでいるが、福島における課題は何か?

「残留する放射性物質の管理が最優先の課題と感じたが、大きな進展が見られたと思う。2番目は使用済み燃料プールと損傷炉心から燃料をいかに取り除くかだが、多くの面で今回の状況に特化しており、技術的に難しい課題。米国では避難に関しては、発電所から一定の半径内にいる住民に関しては一定の時間内に確実に避難できるよう考えることが事業者に求められる。多くの発電所が人口密度の高い地域近くに設置されているため、日米が互いに学ぶべきことは多いと感じている」。

―福島事故では菅総理のリーダーシップが東電の現場に混乱を与えたが、米国では事故の際にオバマ大統領が何らかのアクションを取るか?

「米国では最も重要な責任を負うのはサイトの運転員で、サイトだけで対応出来ないことが明確になるまではNRCは分析・勧告などの支援を提供するのみ。発電所の敷地境界から外で一般公衆を守るのは州の責任であり、避難させるか否かの判断も州知事が下す。避難計画も事前に策定したものを連邦緊急事態管理庁が承認し、それに従って知事が判断を下す。予め定めた制度が適切に機能しない等の場合を除き、ホワイトハウスが直接意志決定に関わることは期待されていない」。

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英国原子力規制機関(ONR)のM.ウェイトマン長官は記者会見の席上、日本で作られつつある原子力規制当局の独立性について、「明確にしておくべきことは原子力の推進機関から法的に独立していなければならないということだ」と述べ、経産省から外れて環境省の下に作られるという点で国際原子力機関(IAEA)のガイダンスに沿ったものとの見解を示した。

同長官は、どの国においてもその国の法制度や産業、社会環境に合った方法をとるべきだと指摘。その上で、「重要なのは規制当局の職員がその職務に責任と価値を感じていることであり、そうした文化を組織のリーダーが形成することだ」と強調した。

このほかの同長官とのやりとりは以下の通り。

―国の原子力政策見直しの結果を待たずに事業者はMOX燃料工場と中間貯蔵施設の建設工事を再開したが、これに関与しないという国や県の姿勢をどう考えるか?

「英国での自分の責務は、望まれていることが安全確実に行われているかを確認すること。人と社会を保護する主な責任は事業者が担っている」。

―一般大衆の信頼回復のために何をすべきか?

「きちんとコミュニケーションを取り、透明性を保つことだ。最も効果的なのは顔と顔を付き合わせて彼らの話を聞き、質問や懸念に答えるということ。そのためには技術的な情報を提供した上で彼ら自身に納得し、決めてもらうようにしなければならない」。

―IAEAの国際原子力安全諮問グループ(INSAG)で策定中だという原子力安全のリーダーシップに関する文書の詳細は?

「大きな事故の場合、常に関連組織におけるリーダーシップや文化に関する問題があることが示唆されている。リーダーは組織の文化を形成する上で非常に大きな役割を負っており、その組織がどう機能し、対応するかに影響する。従って、世界中の原子力安全を考えた時に重要な一要素と思われるのは、他から学ぶことを怖れない謙虚さをもった強いリーダーシップだと言える。この文書は年内に発行予定で、当然、福島事故のことも反映させる予定である」。


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