衆院本会議で審議開始 規制組織、与野党が論戦

衆議院は29日の本会議で、政府提出の原子力規制庁設置など原子力安全規制改革に向けた一連の関連法案と、自民・公明両党が共同提案した国家行政組織法に定める三条委員会(行政委員会)として設置する原子力規制委員会法案の主旨説明と質疑応答を行い、新たな規制機関設置に向け、審議入りした。

政府提出法案の趣旨説明を行った細野豪志・原発事故担当相は原子力安全・保安院の原子力安全規制部門を経済産業省から分離し、各省の規制関係業務を一元化、環境省の外局として「原子力規制庁」を新設することなどを説明した。

同法案のねらいとして(1)推進官庁からの分離(2)緊急時の対応(3)諮問委員会(八条委員会)の「原子力安全調査委員会」による規制庁の第三者的見地からの監視――などを挙げた。特に、過酷事故などの緊急事態時には合議制の委員会形式では十分な対応ができない、と強調した。

自民・公明両党が提出した議員立法案を説明した塩崎恭久・衆議院議員は、自民党政権時代から生じていた原子力発電をめぐる安全神話の思い込みについて、「率直に反省しなければならない」と前置きし、政府案では、各省庁の利益相反が生じ、緊急事態には総理などの政治家が介入することを許すことになり、「(原子力技術に)素人の総理が一部の知人専門家と対応する“菅直人リスク”を排除しなければならない」と主張した。

また政府案では規制庁長官が環境大臣人事であり、職員の出身官庁へのノーリターン・ルールも幹部だけの極めて限定的であり、独立性が不十分、保障措置や日常時の放射線モニタリングなどは文部科学省に残り、一元化も実現しない、と追求した。平常時と緊急時の切り分けでは、原子力施設のサイト内は原子力規制委員会が対応し、サイト外や自衛隊派遣の判断などは政府が責任を持つべきと指摘した。国会事故調査委員会などの結論を踏まえ、3年以内に内閣府に三条委員会として設置し直すべきとした。

各党からの質疑で自民党からは、今本会議が議院運営委員長の職権で開催されことに抗議する一方、3年前の民主党マニフェストでは三条委員会の「原子力安全規制委員会」を設置すべきとしていた点を指摘し、「なぜマニフェスト違反を繰り返すのか」と追求した。また、原子力推進行政と規制行政の予算が、どちらも電源開発特別会計から支出され、今後もされることから、規制関連予算の確保が十分できるのかなどの懸念が示された。

与野党間で法案を修正し早期成立をめざす動きも出てきていることから、当初政府が4月1日発足を目指していた新しい規制機関の設置も急進展する見通しが出てきた。環境委員会に同日、両法案が付託され、1日、5日と開催予定だ。


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