除染後の汚染水対策に活躍期待 移動式処理装置を開発

東京工業大学原子炉工学研究所はこのほど、埼玉県内のNPO法人「再生舎」と共同で、原子力事故に対する除染活動で発生する放射性汚染水の処理を行う移動式プラントを開発し、報道関係者に公開した。同様の処理を行う定置型プラントが、国の「除染技術実証試験事業」で既に開発、実証試験が行われており、検出下限値の10ベクレル/リットル以下までに浄化できる性能が確認済み。実用化すれば、今後、本格化する除染作業で生じた処理水による下流域汚染の防止への活躍が期待できそうだ。

このプラントは、実証試験中より、多方面から大変注目されており、特に、福島県内の原子力事故被災家屋等の洗浄汚染水処理の方法や実施可能性に関する要望も多く、改良に向けた検討が進められてきた。このほど、南相馬市からの検討依頼を契機に開発された新装置は、既に効果が実証された定置型プラントを基礎とする「RPM―2AP」と「RPM―06AP」で、いずれもトラックに積載され、巡回での汚染水処理が可能。

今回、報道関係者には、2トントラックへの積載が可能な「RPM―06AP」によるデモンストレーションが披露され、模擬廃液を用いた水処理を実際に行い、浄化水と脱水汚泥を分離・抽出するなどした。同プラントは、1時間当たり約0.6立方メートルの汚染水処理が可能、これより大きい4トントラック積載型の「RPM―2AP」は、同約2立方メートルの処理能力を備えている。

これまでの実証試験で、フェロシアン化鉄配合吸着凝集剤を使用し、最高約1000ベクレル/リットルの放射能汚染水浄化で効果が確認されているが、シアンは特定有害物質として排水基準が厳しく定められているため、新たな環境汚染源とならぬよう、フェロシアン化鉄を配合しない凝集沈殿剤の開発も進めている。一方、回収された放射性物質は、汚泥として排出されるが、埋立ができる8000ベクレル/kgの基準を大幅に上回っており、保管管理が必要だ。

移動式汚染水処理装置は6月11日、南相馬市で稼働試験を行う予定となっている。


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