検出値以下達成 東工大・再生舎 福島県プールで実証


【開発の経緯】

水を用いた除染作業を行う際、放射性物質を含む処理水が発生することとなり、排水が流れる下流域の生活、産業の状況によっては、取水制限を余儀なくされるかもしれない。このため、排水による周辺環境への影響を極力避けるための工夫が必要となる。

東工大原子炉工学研究所長の有冨正憲教授は、この問題に着目し、NPO法人「再生舎」と共同で、国の「除染技術実証試験事業」の一環として、フェロシアン化鉄配合吸着凝集沈殿剤による水溶液中のイオン化した放射性セシウムの吸着と、浮遊物質の凝集により、放射性物質を回収する放射能汚染水浄化システムを提案、実証した。

試験は、福島県本宮市内のプールで行われ、原子力事故以来、排水できずに貯留されていたプール水約300トンを浄化処理したところ、処理水内のセシウム濃度が検出限界の10ベクレル/リットル以下となることを確認した。

今回、東工大キャンパスの一角で公開されたのは、この定置式プラントの成果をもとに、道路路面や家屋等の洗浄後に発生する汚染水の浄化処理を巡回でも実施できるトラック車載型の移動式放射能汚染処理装置だ。

有冨教授は、「原子力に携わってきた者として、福島の復興のために役立てば」と、特に、凝集剤の能力には自信を示し、システムのスケールアップ、普及に意気込むが、実用化に際しては、「大学では限界」として、ゼネコン他、民間からの技術支援の必要を強く訴える。


お問い合わせは、情報・コミュニケーション部(03-6812-7103)まで