野党 独立性めぐり議論 実現にはなお深い溝 自公案中心に修正協議の動き

衆議院本会議で5月29日に審議入りした政府提出の原子力規制庁設置法案と、自民・公明両党が共同提案した国家行政組織法に定める3条委員会(行政委員会)として設置する原子力規制委員会法案の主旨説明が1日、環境委員会で行われ、5日からは質疑応答に入った。

細野豪志・原発事故担当相が政府提出法案の、自民・公明両党が提出した議員立法案の主旨説明を塩崎恭久・衆議院議員(元官房長官)が行い、与野党議員がそれぞれの立場から質問に立ち、応答した。

自公案(=2面に提案理由全文)を説明した塩崎議員は、新規制組織の推進機関からの独立性だけでなく政治からの独立性も強調し、委員長および4人の委員の身分保障、緊急時の委員長単独での意思決定、事務局となる原子力規制庁の全ての職員のノーリターン・ルールの適用、原子力安全基盤機構(JNES)を同規制庁に統合一体化し専門性を高めること、オンサイトは規制委員会が責任を負い、オフサイトの住民避難などの対応は政府が責任を持つことなどの基本方針を説明した。

5日からの質疑応答では、同委の野党理事の1人、自民党の田中和徳議員は、「理事で修正案の協議を行うことにしている」と述べたほか、自公両党の委員は「自公案の丸飲み」を要求した。

塩崎議員は、「規制委員会の委員長は極めて重い政治的責任が負わされるとの話があるが、誤解だ。緊急時に原子力災害対策本部長(首相)が対応するのは、いまと同じ」と説明し、「原災法の一部を改正し、『原子力災害対策本部長の緊急事態応急対策の実施に係る指示の対象事項から、原子力規制委員会の所掌に属する事項を除くこと』(自公法案)としているのは、技術的専門的判断の部分だけだ」と解説した。

細野豪志・原発事故担当相は「今回の福島事故で水素爆発の後、使用済み燃料プールに注水する際、混乱の中でだれが注水するかを決めなければならない場面で、自衛隊が中心になって行うよう総理が指示書を出した」ことにより、以後作業が順調に進むようになったことを挙げた。また、“事故現場からの全面撤退”など国家的影響が想定されるような場合には、「委員長の判断を覆すような最後の(政治家の)権限は残しておいた方が絶対いいというのが、今回の私の経験だ」と強調した。

また同相は、自公案の職員全員ノーリターン・ルールの摘要について、「行政官の技術系の人たちにとっては、ここが正念場だが、文官の人たちが規制委員会に行ってほしいと言われた場合はどうするか、が問題だ」と述べた。

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細野豪志・原発事故担当相は5日の環境委員会で、大飯原子力発電所3、4号機の再稼働についても、「両機については、3月末までに原子力安全・保安院、原子力安全委員会の安全性の確認が終わっている。この法案とは関係ないと考える。この他は今後、できれば新しい組織で厳格な判断をすることが最も望ましい」と述べたほか、福島事故の緊急安全対策のうち中期的な対策もできるだけ前倒しし、原子力防災指針の法制化も行っていきたいとした。

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6日の衆院経済産業委員会は、環境委員会との連合審査会開催の申入れを決めた。環境委では8日午前に参考人質疑を予定しており、連合審査会は早ければ同日午後にも枝野幸男経産相も出席して、開かれる可能性がでてきた。


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