自公対案=原子力規制委 原子力規制委員会設置法案提案理由(自公共同提出、6月1日衆院環境委員会) 塩崎恭久・自民党衆議院議員 環境省に設置→内閣府へ 独立、専門性、一元化

ただいま議題となりました原子力規制委員会設置法案につきまして、提出者を代表して、その提案理由及び概要を御説明申し上げます。

昨年3月11日に発生した東日本大震災に伴う東京電力・福島第一原子力発電所事故により、今なお多くの方が、困難な避難生活を余儀なくされておられます。国会での議論を通じ、真に安心して暮らせる日本をもたらすことこそ、福島の被災者の方々のみならず、国民の皆様に対して、そして世界の人々に対して、我々国会が果たさなければならない重要な責務であると考えます。

今回の原発事故の教訓を総括すると、

第1に、原子力を推進する経済産業省に規制を担う原子力安全・保安院が属することにより、利益相反が生じ、規制機関の独立性が欠如する中で安全が軽んじられてきたこと、

第2に、緊急事態の対応において、本来規制機関に任せておくべき専門技術的な事柄にまで、総理などの政治家が介入し混乱が生じたこと、

第3に、我が国の原子力規制機関に専門的知識を有した人材と能力が欠落していたこと、

第4に、規制の一元化がなされていなかったこと、

第5に、自然災害と原子力災害との複合災害に対し、有効な、そして総合的な対応ができる態勢ができていなかったこと
――などが挙げられます。

以上のような事故の教訓と反省を踏まえ、本法律案を提出いたしました。以下、その概要を御説明します。

第1に、原子力規制委員会の組織について定めております。原子力規制委員会は、国際基準にかなった独立性が高い3条委員会とし、規制機関として必要な権限は全て規制委員会に付与します。また、その事務局を原子力規制庁と呼ぶこととします。

原子力規制委員会は、安全確保に関する専門的知識と経験を有し、人格が高潔である委員長及び委員4人をもって組織し、委員長及び委員は、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命することとし、委員長は認証官としています。さらに、委員長及び委員の任期中の身分保障を定め、政治などの介入を排除します。

また、原子力規制委員会の職員には、広く有為な人材を求めるとともに、高度な技術的知見を有する現在の独立行政法人・原子力安全基盤機構を、規制委員会の下の規制庁に統合一体化し、規制機関の専門性を高めることとしております。

さらに、事務局の全ての職員にノーリターンルールを適用し、経済産業省などの原子力推進官庁はもちろんのこと、規制委員会の関与が不可欠な安全基準の下で除染や放射性ガレキ処理事業を担う環境省など、原子力安全に関する利益相反が起こりうる省庁との人事交流も戒め、独立性を確保するとともに、専任の職員の教育・育成による専門性の向上を図ることとしています。

また、出身官庁や関係業界との癒着防止の徹底のため、退職後に出身官庁の関係機関に天下ることの禁止など、再就職についても規制しています。

第2に、同委員会は、平時のみならず緊急時においても、他の関係政府機関と緊密な連携協力の下、独立性を確保します。

つまり、原発敷地内、すなわちオンサイトにおける原子炉事故の収束のための専門技術的判断については規制委員会が責任を担い、敷地外、すなわちオフサイトの住民避難などの対応については政府が責任を持つという役割分担がなされます。

また緊急時の際には、迅速かつ適切な対処を可能とするよう、委員長単独で意思決定ができるなどの内部規範を定めることとしています。

第3に、原子力規制委員会の任務、所掌事務について定めています。

原子力規制委員会は、国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資するため、原子力利用における安全の確保を図ることを任務としております。

この任務を達成するため、これまで経済産業省や文部科学省に分散していた、原子力安全、保障措置及び核セキュリティのいわゆる3Sに関する事務を、原子力規制委員会に一元化することとしております。

また、原子力規制委員会は、その所掌事務に関し、関係行政機関の長に対する独自の勧告権を有することとしております。

第4に、原子力規制委員会の職員として、優秀かつ意欲的な人材を確保するため、高い専門的能力を有する人材にふさわしい処遇の充実、独自財源の確保など、所要の措置を講ずることを、「政府の措置等」として定めております。

第5に、原子炉等規制法の目的規定を改正し、「国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資すること」を加えるとともに、同法の許認可権などを原子力規制委員会に一元化することにしております。

第6に、原子力災害が生じた場合の関係機関の連携協力体制の整備を図るとともに、原子力災害であるか自然災害であるかを問わず、全てに共通した災害対策の新しい枠組みを構築するため、大規模災害に対処する政府組織について、抜本的な見直しを行うことを、「政府の措置等」として政府に求めております。

第7に、新設する原子力規制委員会について、この法律の施行後3年以内に、国会事故調査委員会の報告書の内容や、最新の国際的基準等を踏まえ、内閣府に3条委員会(国家行政組織法上の行政委員会)を設置することを含め検討が加えられ、必要な措置が講ぜられるものとしております。

なお、この法律は、公布の日から起算して3月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとしております。

以上が、この法律案の提案理由及びその概要であります。 (自公法案は衆議院ホームページのhttp://www.shugiin.go.jp/index.nsf/html/index_gian.htm)


お問い合わせは、情報・コミュニケーション部(03-6812-7103)まで