原子力委の役割、縮小 原子炉等規制法改定 規制委設立の陰で

原子力委員会の存在意義やあり方論が再びマスメディアで取り上げられている。原子力委員会もその論議を始めようとしているが、当事者の原子力委員たちとマスコミとの間には、その理由に大きな隔りがあるように見受けられる。それは、20日、参院本会議で可決、成立した「原子力規制委員会」設置法の関連法案の内容にある。

衆院環境委員会の民主、自民、公明の3党理事の修正協議で、新たな原子力規制行政の枠組を定める「原子力規制委員会」設置法案などの修正法案が合意され、委員会提出法案として再提出され、審議が行われてきた。

国会での審議は当然ながら、福島事故を受けた新たな原子力規制のあり方や「原子力規制委員会」の役割・体制・業務、規制委員の資質などに議論が集中した。しかし、与野党3党の修正法案の中に、政府が1月に閣議決定した原子力規制庁関連法案に盛り込まれていた原子力委員会のあり方そのものの本質に関わる条項が修正されることなく、引き継がれたことの議論はほとんどなかった。

今回、成立した法律には、現在の原子力基本法、原子力委員会および原子力安全委員会設置法、原子炉等規制法の改定も含まれ、特に原子力委員会の役割の根幹に関わる条項は、原子炉等規制法の改訂条項の中にある。

同法の目的規定から、「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の利用が計画的に行われることを確保すること」が削除され、「発電用原子炉を設置するために必要な技術的能力及び経理的基礎があること」の審査が、「原子力規制委員会」に移行することから、原子力委は従来行ってきた「経理的基礎」の審査も行わなくなるからだ。

尾本彰・原子力委員が最近の原子力委メールマガジンでも述べているように、原子炉等規制法で原子力委に諮問されていた1)平和利用の担保2)計画的遂行3)経理的基礎──の3要件のうち2要件がなくなることを意味している。尾本委員は政府のエネルギー・環境会議での政策決定のあり方などから、すでに「原子力委員会の役割は変質した」とも述べている。

原子力委の改革は、準備会合で事業者から意見を聞いていたとか、事務局に電力関係者が出向していたとかいう運用上の問題からではなく、法規定から求められている。(河野 清記者)


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