WH社、予備作業交渉で覚書 米製原子炉の対印輸出が一歩前進

ウェスチングハウス(WH)社は13日、インド・グジャラート州ミティビルディにおけるAP1000建設構想について、初歩的作業協定(EWA)の締結を目的とする交渉をインド原子力発電公社(NPCIL)と行うことで了解覚書(MOU)を調印したと発表した。予備的な認可手続きやサイト整備などが含まれるとしており、米国の原子炉メーカーが大規模な原子力新設計画を進めるインドと原子力貿易が可能となるよう、両国政府が2008年に結んだ米印原子力協力協定の実質的な実現に向け、ようやく具体的な進展が見られたとして、両国政府も歓迎の意を表明している。

インドでは稼働中原子炉20基のうち2基がカナダ製の加圧重水炉、16基が同技術をベースに自主開発した同型炉で、出力は最大でも50万kW級と比較的小規模だ。諸外国から大型軽水炉を導入する手始めに、NPCILは1988年にロシアと結んだ協定に基づき2002年からクダンクラムで100万kWのロシア型PWR2基を建設する一方、08年に米国の働きかけにより原子力供給国グループ(NSG)がインドを特例扱いとし、米印協定を締結した後は米国のWH社およびGE日立(GEH)社とも軽水炉の建設協力で覚書を締結。09年に内閣が西海岸のミティビルディをWH社の100万kW級PWR6基用、東海岸のアンドラ・プラデシュ州コバダをGEH社製の100万kW級BWR6基用として暫定指名していた。

10年には仏アレバ社と南西部のジャイタプールに欧州加圧水型炉(EPR)2基を建設するための枠組合意文書に調印。しかし、同年8月に議会で可決・成立した原子力損害賠償責任法が諸外国の通例と異なり、設備の供給者にも一定範囲内で賠償責任を盛り込んでいることや、福島事故後に計画サイトの地元住民による反対運動が拡大したことから、外国メーカーとの交渉は目に見えた進展がなかった。

13日にワシントンで開催された第3回・年次米印戦略会議後、記者会見を行った米国のH.クリントン国務長官とインドのS.クリシュナ外務大臣はWH社とNPCILの覚書調印について、次のような見解を表明した。

クリントン長官=「原賠法に関する理解の問題等やるべきことは山積しているが、これを機にグジャラート州での新設計画が加速するとともに、GE社などその他の米国メーカーによる商談が続くよう期待している」。

クリシュナ外相=「米印協定締結直後から国内で広がった混乱や、うがった解釈を落ち着かせることができるし、原子力貿易が拡大し始めたことを喜びたい。両国の企業が今後一層関与し合うことを希望する」。


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