津波高さ想定に「甘さ」 東電、福島事故調査報告公表

東京電力は20日、福島原子力事故調査報告書を取りまとめ、原子力安全に対するこれまでの取組、発電所を襲った地震・津波の大きさと設備への影響、事故対応の状況、得られた教訓に基づく設備面および運用面の対策について、調査・検証から明らかになった事実を公表した。今回の福島第一1〜3号機が炉心損傷事故に至った直接的原因は、津波襲来ですべての冷却手段を失ったことにあるが、報告書では、津波に対抗する備えが不十分だったことが根本的原因との反省に立ち、想定を超える事象が発生することを基本的考え方に据え、講じるべき対策を述べている。

東京電力では、11年6月より社内委員会で事故の調査・検証を進め、12月には、原因と再発防止に向けた主として設備面の対策を取りまとめた中間報告書を公表。今回報告書では、設備面に加え、事故対応に関する運用面の課題を抽出するなど、これまでに明らかとなった事実や、解析結果等に基づき原因を究明し、原子力発電所の安全性向上に寄与するための必要な対策を提案すべく、充実・追加を図った。

福島第一発電所は、1960年のチリ地震津波による潮位を設計条件として、国の設置許可を受け、以降、東京電力では、土木学会の技術基準による津波高さ評価、文部科学省・地震調査研究推進本部の見解、貞観津波の波源モデルによる試算など、自主的な検討・調査等を実施してきており、今回報告書では、これらの最新知見を踏まえ対策に努めてきた経緯を述べた。一方で、これらの高さ想定は、自然現象である津波の不確かさを考慮していたものの、「結果的に甘さがあった」ことが、事故の根本原因のみならず、ほとんどすべての設備機能を喪失し、その後の収束活動をも困難にした要因となったなどと分析している。

事故対応については、中間報告までに示されたプラント挙動、設備機能、事故対応を困難にした障害要素など、ハード面の課題に加え、態勢・役割分担、情報公開、資機材輸送、放射線管理など、ソフト面の課題も抽出し、対策を述べ、事故を契機に一層の安全確保に向け、安全意識・風土の醸成、リスクコミュニケーションの改善他、全社的なリスク管理の充実・強化を図っていく。


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