| 全国原子力発電所所在市町村協議会 被災自治体調査回答全原協は、会員の中で被災した福島県内の6市町を対象とし、2011年7月〜2012年2月に各役場を訪問して聞き取り調査を行った。以下は2012年3月の調査報告から抜粋。 【双葉町】1.発災直後の庁舎の電源・通信等の状況
 ・停電したが、非常用発電機で電源を確保した。
 ・固定電話1台、FAX1台のみ使用可能であった。
 ・福島第一、第二のホットラインがあったが、手回式の第二しかつながらなかった。
 2.放射性物質除去(除染)の状況について
 ・警戒区域に設定されていることから、立入不可能につき、全く進んでいない状況にある。
 ・事故の収束に向けた「第2ステップ」が完了した時点で、警戒区域の解除した上で、新たな区域見直しを検討することとなっているので、これから除染作業等についても具体案が示されると考えるが、現状では除染技術が確立されておらず、国のモデル事業の実施受入れは困難な状況にある。今後の技術開発の状況を十分に見極めたい。
 3.国、自治体、事業者等への要望
 <国への要望>
 ・原発災害が長期化するに伴い、2回目の一時帰宅等が検討されており、それらに伴う事務量が増大し、現在の職員の状況では対応することは不可能な状態。国や県に対し人的応援の要請を行う必要がある。
 ・現在、災害救助法の中で対応されているが、原子力災害における特別法制定が必要。
 ・電源三法交付金について、事故対応への使途を認めてもらう。或いは、事故対応のための基金造成など交付金の上積みを図ってもらいたい。
 ・担当職員の異動が早すぎて、プロは育たない。職員の養成を行うこと。
 <事業者への要望>
 ・後継者、技術者を養成し、技術の継承を行うこと。
 (発電所を造った人が定年退職し、経験の無い若い職員で現場対応はできない)
 <全原協への要望>
 ・このような事故事例の検証をするスタッフを作らないといけないのではないか。
 ・国に交付金のあり方の見直しを求めて欲しい。
 (使うための交付金ではなくて、事故対応の使い方を国に認めてもらう。或いは、事故対応の基金造成のための交付金の上積みを諮ってもらう事が大切ではないか。)
 <自治体への助言>
 ・防災協定、災害援助協定は結んでおくべき。
 ・住民組織が必要。
 ・行政組織をどうやって維持するかが重要(住民対応を整理して役割分担を明確に)
 ・発電所に対する取組み方、体制について、職員はプロにならないといけない。
 
 【大熊町】1.発災直後の庁舎の電源・通信等の状況
 ・停電したが、非常用発電機で電源を確保した。
 ・固定電話1台、FAX1台のみ使用可能であったが、不通が多かった。
 (FAXは3/11 19:00頃から使用可)
 ・福島第一、第二のホットラインがあったが、手回式の第二しかつながらなかった。
 2.放射性物質除去(除染)の状況について
 ・20km圏内に入れないので、計画等は今後。
 ・国が計画を策定しており、モデル事業でどれくらい除染ができるかを、発電所周辺と役場周辺の2箇所で10月末〜11月終わりまでで実施。
 ・除染について、年間20mSv以上は国が、1〜20mSvは市町村が実施。
 ・他の町村では20mSv以下の地域で住んでいるが、それでいいのか判断は必要。
 ・大熊町としては20mSvギリギリのところを除染して復旧に向けた拠点を作りたい。
 ・その効果を見て町の方針を出す。
 3.国、自治体、事業者等への要望
 ・精神的慰謝料並びに本年中の収入補償については、ようやく動き出したが、資産補償が全く動きなし。
 ・放射性物質の汚染が明確になっており、除染を実施しても100%除去できないことから、早急な補償について、行動をおこしてもらいたい。
 ・事故の早期収束が決まらないと次のステップに進めない。
 ・9月中旬より賠償の本請求が始まったが、不動産(財産)に関する請求が決まっていない。事故後7ヶ月を経過し、転機に支障をきたすため、早急に示すべきである。
 ・介護保険料の減免実施に伴い、天引き分の還付の必要が生じた。日本年金機構から還付するなど労務の軽減をお願いしたい。
 ・原子力発電所の立地自治体は立地段階から苦労している。国は責任を持ってエネルギー政策に関わってほしい。
 ・交付金について、これまでの説明だと燃料棒があれば長期発展対策交付金は出せるといっていたが、打ち切りの流れもあるようである。
 ・廃炉までの交付金の新設を。
 ・立地給付金については個人ではもらえないが特例で昨年の実績を踏まえて町一括ならもらえるとのことで、災害復旧に使いたいと考えているが、県がもらって県全体に交付する動きもあるようである。
 
 【楢葉町】1.発災直後の庁舎の電源・通信等の状況
 ・役場の電源について、自家発電は回ったが、停電時間は短かった。
 ・直後はホットライン、FAXが通じていた。
 ・途中から不通になり、衛星電話もつながらなくなった。
 2.放射性物質除去(除染)の状況について
 ・国から町内2カ所(南工業団地(前緊急時避難準備区域)、上繁岡行政区の一部(警戒区域内))を除染モデル地区として決定を受けた。
 ・実施内容等の詳細については現在検討中。
 3.国、自治体、事業者等への要望
 <国>
 ・原子力災害前の状況まで復旧し、復興を前提とした第2ステップ以降のロードマップを早期に提示すること。
 ・エネルギー政策の見直しを進めること。
 <事業者>
 ・東京電力福島第一原子力発電所の事故を教訓とし、原子炉の堅牢性、安全性を過信せず、防災対策を見直すこと。
 <国・県>
 ・災害時の連携を見直すべきである。
 ・今後、短期的な見通しを示すべきである。
 
 【富岡町】1.発災直後の庁舎の電源・通信等の状況
 ・停電し、非常用発電機も使用できなかった。
 ・隣接する「学びの森」は非常用発電機で電源が確保できたため、災害対策本部を移動した。
 ・福島第一、第二とのホットラインはつながっていた。(第一とはつながりにくく3/12未明から不通)
 2.放射性物質除去(除染)の状況について
 ・10/18現在、モデル地区2ヶ所を指定し、地域住民の承諾をもらっている状況である。
 ・警戒区域内は全て国でということになっている。
 ・除染したものは膨大な量になり、一時仮置きや中間貯蔵がどうなるのか、見通し不明
 ・将来見通しは不明。
 3.国、自治体、事業者等への要望
 ・マスコミに情報を流す前に、関係自治体との協議を行って欲しい。
 ・表に出せば住民が反応し、問合せは全て市町村にくる。
 ・また、結局、実際に業務をやるのは市町村ということが多く、対応する市町村の状況、能力を考えていない。
 ・大臣が思いつきで言ったことが全て市町村にかかってくる。
 ・支援物資等について、品物でなくお金で渡せるようにして欲しい。
 ・早急に賠償について、対応して欲しい。
 
 【南相馬市】1.発災直後の庁舎の電源・通信等の状況
 ・庁舎1階に整備されていた衛星電話1台のみが使用可能であった。
 ・東京電力とのホットラインはない。
 2.放射性物質除去(除染)の状況について
 ・平成23年7月に、「南相馬放射性物質除染方針」、「放射性物質除染マニュアル」及び「南相馬市放射性物質除染カレンダー」を策定した。
 ・8・9月を除染強化月間と位置付けながら除染を実施してきている。(計画施設数236)
 ・10/19現在では、原子力災害対策本部が示した「除染に関する緊急実施方針」に基づく本市の除染計画を策定している。
 ・全国に先駆けて「除染対策室」を設置。(市4名、杉並区3名、東電1名、臨時1名)
 ・東大アイソトープ総合センターと協定を結び、専門家がずっと来てくれている。
 ・仮置き場をどうするのか、これから地元説明が大変である。
 ・20km圏内は国が実施、市内全域、国でやるべきといっているが、待っていられない。
 ・「南相馬市線量低減化活動支援事業補助金交付要綱」を定め、通学路、公園等の除染等を実施する団体に対し、補助金(50万円)を交付することで、コミュニティによる除染の促進を図っている。
 3.国、自治体、事業者等への要望
 ・原子力発電所の状況と国の発表に乖離があり、報道規制があったとしか思えない。正確且つ偽りのない情報を迅速に伝達していただきたい。
 ・SPEEDIは一番早く出すべき情報。
 ・SPEEDIが早く公開されていれば、避難路も飯舘、福島方面ではなく、仙台方向に誘導し、飯舘、福島方面に避難した避難者は被曝をすることはなかったはずである。
 ・国、事業者の動きと東京電力の動きが異なり、最終的には、市町村の情報による対応を事業者が求めるなど、被災自治体への負担が大きく、如何に被災自治体の負担を軽減するか、全国的な展開をお願いしたい。
 ・特に、避難者が居住している自治体の連携がスムーズにできる体制の整備をお願いしたい。
 ・国の対応は遅い。我々に対して何もできていない。
 
 【浪江町】1.発災直後の庁舎の電源・通信等の状況
 ・停電したが、非常用発電機で電源を確保した。
 ・電話、FAX は使用可能であった。
 ・東京電力とのホットラインはない。
 2.放射性物質除去(除染)の状況について
 ・警戒区域のため立ち入りができず、放射性物質の除去は行われていない。
 ・モデル地区(2箇所)を選定し、11月半ばから来年2月下旬までを目処に除染を計画している。(1箇所ずつ行う)
 ・今後放射性物質の除染、除去については国が主体になって行うとなっている。
 3.国、自治体、事業者等への要望
 <国>
 1.帰還環境の早急な整備。
 ・警戒区域の運用緩和(除染、インフラ調査などのため)
 ・モニタリングポストの全町配置。
 ・日本の総力を挙げた除染の実現。
 ・帰還可能時期の提示。(帰還ロードマップの作成)など
 2.放射能不安への対応。
 ・線量計の各世帯配布予算の確保。
 ・放射線量、放射性物質に関する安全基準の公的な整理。
 ・ホールボディーカウンターの被災自治体への配備。
 3.損害賠償の責任ある対応
 ・中間指針の抜本的な見直し及び責任説明の遂行。
 ・東京電力による賠償対応の柔軟化。
 4.避難者支援のための原発被災自治体への財政支援等の強化。
 
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