仏安全当局が福島事故後の安全強化命令 数年間で32の改善策実施へ

仏国の原子力安全規制当局(ASN)は6月28日、福島事故からの教訓を元に国内の原子力関連施設の事業者に課す新たな安全性改善策を公表した。極端な自然災害や過酷事故への対応を想定したもので、フランス電力(EDF)とアレバ社および原子力・代替エネルギー庁(CEA)が対象機関。非常用電源の増強配備など、2018年までにこれら機関が成すべき作業や必要経費は、膨大な量にのぼると見られている。

仏国では、福島事故後に稼働中原子炉等で実施した補完的安全評価(CSA)について、ASNが今年1月に結果報告書を公表。「いずれの施設も十分な安全レベルに達しており、直ちに停止を求めることはない」とする一方、安全性の実質的向上を図る設備や対策を施設ごとに取るよう各事業者に要求していた。

今回ASNが決定した改善項目は32件にわたり、各項目当たり約30点の対策を指摘。特に、施設ごとにシステムの「ハード・コア」と呼べるものを構築し、設計ベースを超える極端な事象に際しても十分な頑健性と重要な安全機能が保証されるよう安全裕度を高めるとしている。

国内の19サイトで合計58基のPWRを操業するEDFの場合、ハード・コアとして地震や洪水に対処できる大型の電力貯蔵・供給機の設置が2018年までにすべてのサイトで義務付けられる。従来型の緊急用ディーゼル発電機は13年末までに追加で設置しなければならないほか、事故時に現場に急行する専門家やエンジニアによる「即時対応部隊(FARN)」も年末までに発電所サイト毎に配備。14年後半にも本格的な稼働が可能となるよう手配する必要があるとしている。

燃料サイクル施設を操業するアレバ社に対しては、地震や洪水の発生時にも使用済み燃料貯蔵プールに水を満たす強固な手段の設置計画を年末までに提出するよう要求。このほか、ウラン転換施設(SOCATRI)やジョルジュ・ベスIIウラン濃縮工場、コミュレックスの六フッ化ウラン製造施設等から、事故時にフッ化水素ガスや六フッ化ウラン等が放出されるのを防ぐため、有効な対策を年内に提出するよう義務付けた。

CEAの研究開発施設については、2013年末までにMUSURCA研究炉からすべての核分裂性物質の撤去を要求。OSIRIS炉、フェニックス炉、建設中のジュール・ホロビッツ炉に関しても、地震や火災、洪水などの事態に際してナトリウムなどの冷却剤を喪失することがないよう、改善対策を求めている。


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