チアンジュ1のみ運転延長 ベルギー内閣、電源確保で脱原子力を減速

ベルギー内閣は4日、2015年に閉鎖予定だった比較的古い原子炉3基のうち、チアンジュ1号機のみ運転期間を10年延長する判断を下した。残りの2基は予定通り閉鎖する方針で、事業者は09年に政府と交わした覚書どおり、3基すべてで運転延長を認めるべきだと抗議している。福島事故に伴い、政府は推進傾向にあった原子力政策から脱原子力に逆戻りする方針を打ち出したものの、総発電量の約半分を賄う原子力の代替電源確保に苦慮。現実的な課題に直面し、方針が二転三転している実情が露呈した形だ。

ベルギーでは03年に緑の党を含む連立政権が原子炉の運転期間を40年に制限するなど、2025年までに脱原子力を達成する政策を決定した。が、前政権は09年、エネルギーの安定供給やCOの排出抑制などを理由に、15年に運開後40年目を迎えるドール1、2号機およびチアンジュ1号機の運転期間を10年延長する覚書を、拠出金の支払いという条件付きで事業者であるエレクトラベル社の親会社のGDFスエズ社と締結した。

しかし、同覚書が法制化される前に福島事故が発生。現在の連立政権は覚書を破棄したが、今回、チアンジュ1号機のみ、2025年までの運転延長を承認。その理由として「冬季に50万〜100万人の住民が停電に見舞われるリスクを低減するため」と説明している。

ベルギーで稼働する原子炉七基すべてを操業するエレクトラベル社は、内閣の方針が09年の覚書を遵守しておらず、欧州連合規制の自由市場原理にも反すると非難。経済的な持続可能性の評価が欠けた手法だと形容している。

その背景として同社は、内閣が今回の判断を下す前日、運転期間を10年延長する準備に関して同社がまとめた技術報告書に対し、連邦原子力規制局(FANC)が好意的な裁定を下していた事実に言及。FANCの分析では運転延長に際し一サイト当たり5億ユーロ以上の投資が必要であり、チアンジュ1号機で10年間の運転期間延長が確実に保証されなければ、同社としては5億ユーロをかけて同原発の運転期間を延長することは難しいとの考えだ。このため、同社は内閣の判断根拠となった経済的要素について政府から明確な情報が得られるまでは、3基の停止準備を続行すると明言している。


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