政府事故調が報告書 炉心損傷時期など精査 各省に今後の対応要請

政府の福島原子力発電所事故調査・検証委員会(委員長=畑村洋太郎・東京大学名誉教授)は23日、東京・大手町庁舎で会合を開き、最終報告書を取りまとめた。報告書は会議終了後、その場で委員長より野田佳彦首相に提出され、野田首相は「まずは精読したい。二度とこのような事故が起こらないよう、事故の再発防止に向け万全を期して取り組んでいきたい」と述べた。

同委員会は、11年5月の閣議決定により設置され、同6月の初会合から数えて計13回の本会合を開催、発電所視察、関係者からのヒアリング、被災地域首長らとの意見交換、国際シンポジウム開催などを通じ、規制行政庁、事業者等とは独立した立場で、技術的、制度的な問題も含め、包括的に検討を行ってきた。ヒアリングの総人数は計772名、総聴取時間は計1479時間にも上った。

本文編と資料編とを合わせて計800ページ超に及ぶ今回報告書は、同委が去る12月に取りまとめた中間報告と一体となるもので、中間報告段階で調査未了だった事項や、さらに調査・検証を要することとした事項について明らかとなった事実を、既報の事柄は改めて再掲せずに記述している。

また、最終章では主要な問題点に分析・考察を加えた上で、「抜本的かつ実効性ある事故防止策の構築」、「複合災害という視点の欠如」、「『被害者の視点からの欠陥分析』の重要性」など、重要な論点9項目の総括を行い、中間報告で示されたものも合わせて、原子力災害の再発防止および被害低減のための提言を述べた。提言は、原子力の安全対策・防災対策、被害の防止・軽減策、規制機関のあり方などに関し、同委の使命が事故の再発防止に向けた政策提言にあることから、「今後も原子力発電所を存続・活用すべきとの考えを前提としたものではない」とした上で、今後の原子力利用の是非にかかわらず「迅速かつ確実に実現を図ることが重要」とする事項を挙げ、関係省庁において具体化やフォローアップを求めている。

事故対処に関する問題点分析では、福島第一発電所における現場対処を福島第二発電所と比較し、例えば、第一発電所3号機では高圧注水系手動停止の際に代替手段をあらかじめ準備しなかったことにより、6時間以上にわたり原子炉注水が中断した一方で、第二発電所では作業環境が良好であったこともあるが、次の代替手段が実際に機能するかを確認した上で、注水手段を切り替えるといった対応がとられ、第一発電所の対処は第二発電所に比べ適切さを欠いていたなどと指摘している。

施設・設備の被害状況に関しては、中間報告以降、各号機のプラント関連パラメータ、当直日誌などの客観的資料を精査し、特に、福島第一1〜3号機について、機能の喪失の有無、程度および時期等を動態的にとらえた検証を行った。

また、原子炉の圧力計、水位計に誤差が生じるメカニズムも考察した上、例えば、1号機の被害状況では、圧力容器またはその周辺部は、地震発生直後から津波到達までの間、機能を損なうような損傷が生じた可能性は否定されるとし、津波到達以後、冷却や代替注水がされず、圧力容器内が高温、高圧状態に置かれ、「3月11日20時7分頃以降、同月12日2時45分頃までの間に、溶融燃料落下による圧力容器底部の破損の可能性」などと推察している。


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