科学的・合理的判断を 原産協会 運転制限導入で意見

日本原子力産業協会の服部拓也理事長は20日、先週の「福島の廃炉に向けた研究開発は国際プロジェクトで」に続いて、「原子炉の運転期間について」と題するメッセージを発表した。

現在、政府が行っているエネルギーミックスの選択肢の国民的議論の展開の中で、「原子炉の運転制限を40年とするとの政治的な判断が、根拠が十分に示されないまま、なされることが懸念される」として、「運転期間を単に運転年数で一律40年に制限することは、科学的・合理的な判断ではないし、国際的動向ともかけ離れたものである」と主張している。

原子炉の運転期間については、科学的・合理的な判断基準のもとに、安全性の確認を行った上で、その制限や延長を判断すべきだ、と強調。

これまで世界では、1万5000炉・年にも及ぶ運転・保守経験が蓄積されており、これらの経験を基に、機器類の劣化の程度を適切にモニターしながら的確に運転・保守すれば、「当初計画した運転期間を延長しても、機器類の安全性や健全性を維持できると評価されている」と紹介している。

米国をはじめ原子力先進国では、技術評価をベースにして個別プラント毎に安全性を確認した上で、運転期間を当初の計画から延長し、合理的な範囲で既設の原子力発電所のメリットを最大限引き出す取り組みが行われている、としている。

例として米国では、原子力法で40年と定められている運転期間も、運転認可更新規則によりさらに20年間の延長が認められている。ちなみに2011年12月時点で、104基のうちの71基が運転認可更新承認済み、13基が審査中、また19基が更新予定だとしている。

我が国の状況について、「建設が進められているものは別としても、原子力発電所の新増設は当面難しいとの前提で議論を進めざるを得ない」とした上で、我が国の50基の既設炉のうち、その約3分の1にあたる17基が運転開始後30年を超えており、「既存の原子力発電所をどのくらいの期間運転するかは、2030年断面での原子力発電の割合を決定する重要なファクターとなると、重要視している。

そのような現状の中で、我が国の規制当局は、すでに複数の原子炉プラントに、40年を超えて運転しても安全上問題ないとの評価結果を出しており、「この評価は諸外国の例とも整合するもので、妥当な結果だ」と歓迎している。

いずれにしても、運転期間のあり方について、「安全基準を満たしているプラントを、政治的に定められた運転期間で一律に停止することは、国民経済的にも、また地球温暖化対策にとっても、大きなマイナス」と主張し、あくまで「科学的・合理的な判断基準のもと、安全性の確認を行った上で、その制限や延長を判断」と訴えている。


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