経団連 「原子力は不可欠」 経済成長、国際競争、雇用に重要 現実的政策を要請 エネ選択肢に意見提出

日本経団連は7月27日、政府が検討している2030年時点の「エネルギー・環境に関する選択肢」に関して、意見書を提出した。意見書では、我が国の経済成長、産業の国際競争力、雇用確保、温室効果ガスの排出削減などの面から、エネルギーの安定供給が不可欠であり、とりわけ原子力エネルギーの確保が重要だとしている。省エネ・再生エネの大幅な導入計画は、「経済性を含め、実現的な想定とすべき」と厳しく批判している。

意見書では、「わが国が、大震災からの復旧・復興、財政再建などの諸課題を解決しながら、豊かで安全・安心な国民生活を確保するうえで、『名目3%、実質2%』の成長を目指した政府の成長戦略の実現が不可欠」と強調し、そのためにはエネルギーの安定供給が極めて重要であり、「経済性ある価格でエネルギーが安定的に供給されなければ、成長戦略を進められないばかりか、激化するグローバル競争の中で産業や雇用の空洞化に拍車がかかる。エネルギー問題を経済や産業の足かせとしてはならない」と訴え、将来にわたっても原子力発電の重要性を強調している。

エネルギー政策に求められる基本的視点として、(1)エネルギーの安全保障(安定供給)、経済性、環境適合性の適切なバランス(2)政策の費用対効果や、国民生活および企業活動への影響を十分考慮しながら、成長や国民生活に必要なエネルギーの確保(3)化石燃料の有限性を踏まえ、省エネルギーや再生可能エネルギー技術の開発・普及に最大限努力する必要がある。他方、エネルギーの需給ギャップが生じないよう、現実的な導入可能量は十分精査されるべき(4)化石燃料に乏しく、容易に電力の輸入ができないわが国は、リスク分散と資源国に対する交渉力確保の観点から、エネルギー源の多様な選択肢を維持する必要がある(5)地球温暖化問題には、経済との両立を図りながら着実に取り組むべき──の5点を挙げている。

その上で、「エネルギー・環境に関する選択肢」の各シナリオ共通の問題点として、(1)エネルギー需要の予測の前提となる経済成長率の想定が、実質で2010年代は1.1%、20年代は0.8%とされるなど、政府の成長戦略との整合性がない。最終エネルギー消費で約7.5%、電力需要で約8.1%もの違いがある(2)わが国では過去、電力需要の対実質GDP弾性値がプラスで推移してきた。今回の各シナリオは、今後約20年にわたり、GDPが伸びても電力需要は減少するという逆の想定。将来、電力不足が生じることのないよう、省エネ・再エネ等の導入量は、楽観的でなく、経済性を含め現実的な想定とすべき。省エネ、再エネ、系統対策費用として100兆円を超える投資が見込まれ、こうした負担で将来の成長に必要な投資資金が不足することとなれば、産業の国際競争力に深刻な影響を与えかねない(3)政府のエネルギー政策は、国民生活や産業、雇用を守るものでなければならない。モデルによって幅はあるものの、電力料金で約26%〜130%の上昇、実質GDPで0.4%〜7.6%の減少となっている。産業の国際競争力や雇用への影響などについての詳細な分析がなされていない(4)温室効果ガスの排出削減について、国際的公平性の検証がなされていない──などの問題点を指摘している。


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