厳しい意見の中、今後の対応に期待 政府事故調が地元福島で報告会 「政府は提言実行を」 畑村委員長 事故全体は未解明

政府の福島原子力発電所事故調査・検証委員会(委員長=畑村洋太郎・東京大学名誉教授)は7日、報告書の内容を地元福島県の自治体に説明するため、福島市内で報告会を開いた。自治体の首長らからは、報告書を取りまとめた労をねぎらう言葉は多かったが、「残念ながらこのままだと、すばらしい報告書を持つことに酔いしれて、中身を活かすことにはならないのではないか」、「我々から見ると、何も改善されていない。何も変わっていない。日本国民みんなで(事故の結果を)背負わなければならないとしたら、もう少し対応が違うのではないか」などとする危惧や不満も表明され、各方面への今後の対応に強い期待が寄せられた。

政府事故調側からは畑村委員長、柳田邦男、柿沼志津子、林陽子、古川道郎、吉岡斉の各委員が、自治体側からは福島県、県内各自治体首長など関係者が出席した。佐藤知事の出席はなかったが、井戸川双葉町長、渡辺大熊町長、遠藤富岡町長らも参加した。

畑村委員長は挨拶の中で、「責任追及を目的としないことを前提にして、皆さんに協力してもらった。ものすごく高い授業料を我々は払わされたわけであり、その教訓を徹底的に知見にしなければならない」としたものの、「現場は(放射線が強く)踏み込めないこともあり、全体像を捉えてはいない。事故はまだ進行中だ」と指摘した。また、「住民16万人が生活の場を追われ、いまだ帰れずにいる。調査は終わらせてはいけない。政府は提言を実行していくことに、真摯に努力してほしい」と述べた。

質疑、意見交換の中で、「福島の自治体は今後どうあるべきか」との問いに対して、畑村委員長は「事故が起こってしまったいま、いままでと同じでいいか。自分で考え、自分で行動することが求められている」とした。

また別の首長からの、「責任者がいないということは、無責任者ばかりでは困る」との指摘に対して、畑村委員長は「責任がないと言っている訳けではない。責任はどこかにあるし、必要な追求は別の組織で、別の人が行ってほしい」と述べた。

放射能の影響について、「この放射線量は大丈夫か、この食べ物は食べられるか、米の全量検査は必要かなど、不安の連鎖が広がり、風評被害も大きい」との指摘に対して、柿沼委員は、「少ない放射線が長い間にわたって身近にあることの不安や、除染後の放射能の対処法が問題だ」と述べ、「放射線はもともと(自然界に)あるもの。そこに、いま少し増えたので、みんなで勉強し、理解して行かなければならない」と語った。「地元の子ども達が大きくなって、お父さん達やみんなが、あのとき一生懸命にやってくれたと思ってくれるように、いま努力したい」とした。

東京電力・福島第一原子力発電所の作業員について、畑村委員長は「厳しい環境の中で、命をかけて作業してくれた人たちがいたからこそ、この程度で事故が済んだともいえる」と述べたほか、東京電力が事故の危険性が高まったことから、作業員を撤退させるかどうかを検討したことについて、柳田委員は「生命倫理の問題で、原子力発電所の作業員がどこまで働くべきか重い課題だ。地震後、消防団員の中には、年寄りを背負って津波に流された人もいる」とした。

井戸川双葉町長は、作業員の働きについて、「双葉郡には福島原発で働いている人も多い。事故時にちり紙に遺書を書いた人もいたことを忘れないでほしい」と述べた。


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