原子力は火力等で代替 台湾の新たなエネルギー政策

原産協会は7月24、25の両日、台湾の中華核能学会、台湾電力公司(TPC)などとの共催で第27回目の日台原子力安全セミナーを台北で開催した。

台湾では福島事故の影響を受け、馬英九総統が昨年11月に原子炉の運転期間を40年とし、延長を認めないなど原子力への依存度を減らしていく方針を盛り込んだ新たなエネルギー政策を公表。13年前から建設中の龍門(第4)原子力発電所の2基が2016年までに運開した場合、第一発電所の2基を早期閉鎖することも明記されており、今年6月には経済部が同政策を再確認する内容の声明を発表している。今回のセミナーではこの政策の詳細とともに、福島事故の教訓に基づいて既存の3サイト・6基の原子炉で取られている安全性強化対策が明らかにされた。

福島事故後の新エネルギー政策、およびこれに準じてTPCが取るべきアクションについては、TPCの蔡富豊・首席エンジニアが次のような詳細を紹介している。

同政策ではまず、主要な指令として(1)原子力安全の徹底(2)原子力設備の緩やかな削減(3)低炭素環境の達成(4)非原子力国家に向けた前進――が打ち出された。これらを踏まえ、TPCは省エネと低炭素化のための様々な手段を開発するとともに、合理的な価格による安定した電力供給を維持。その上で、温室効果ガス排出量削減の国際的誓約を満たすという目標を達成していくことになった。

総発電電力量の19%を賄う既存原子炉の安全性強化策としては、TPCが福島事故後に徹底的な安全審査を実施したほか、多重災害への対処能力と準備を強化した。これに加えて、発電所毎に10年に一度の包括的安全評価を完了するとともに、欧州の安全基準に則ったストレステストを実施。建設中の龍門発電所については世界原子力発電事業者協会(WANO)などの国際機関が審査した最も厳しい安全基準のクリアが求められるとしている。

一方、行政院・原子能委員会(AEC)は第1、第2段階の安全性評価を完了した時点で、以下の対策をTPCに要請した。すなわち、(1)火災、および洪水や地震などの自然災害による被害に対する既存原子炉の耐久性を強化(2)主だった事故の影響緩和手順を策定し、定期的に訓練(3)発電所毎に設計を超える事故への対処プログラムを策定し、炉心溶融と放射性廃棄物放出の防止機能を付加――である。

原子力の段階的廃止に際しては、まず電力需要と最大負荷の低減を図る。最大負荷は2012年から23年までに年平均2.7%で増加すると予測されるが、2011年に490万kWの削減効果があり、22年には540万kWの効果を見込む。同時に代替エネルギー開発に力を入れ電力の安定供給を保証。ベース・ロード用の火力発電設備を拡大するほか、二酸化炭素の回収・貯蔵(CCS)等の採用によりクリーン・エネルギー生産を増大する計画だ。

既存の原子炉6基は40年間という現在の運転認可の延長を認めず、その満了とともに順次閉鎖する方針。具体的には、金山(第一)原発1、2号機がそれぞれ2018年12月と19年7月に、國聖(第二)原発1、2号機が21年12月と23年3月に、馬鞍山(第三)原発の1、2号機が24年7月と25年5月に閉鎖される。ただし、建設中の龍門原発については、安全性が保証された場合に限り営業運転が認められるとしている。

このほか、低炭素な環境を作り上げる方策として、TPCは2011年実績で323万kW、総設備容量の7.8%を占めていた再生可能エネルギーを25年には全体の16.5%にあたる990.2万kWまで拡大。この年までには出力72万kWのガス火力発電所も15基増設予定で、ガス火力の設備容量は2011実績の36.7%から39.2%に増加する計算である。


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