原子力への投資拡大表明 米大統領選 ロムニー共和党候補のエネ政策

今年11月の米大統領選挙を控え、28日に正式に共和党候補者に指名されたM.ロムニー前マサチューセッツ州知事(=写真)は23日に、10年以内に完全なエネルギー自給を目指すという多様性のある独自のエネルギー政策を公表した。オバマ現政権が再生可能エネルギーによる雇用促進に固執しているとして、その政策を批判する一方、自身は石油や天然ガス、および原子力の規制改革を推し進めることにより、国内の埋蔵資源開発を強化。原子力については2年以内に認可が発給されるよう原子力規制委員会(NRC)の手続きを簡素化するなど、さらなる投資を促していく考えを明らかにしている。

同候補によると、オバマ政権は石油や石炭に代わる再生可能エネルギーに数十億の予算をつぎ込むなど、いわゆる「グリーン雇用」の創出に強くこだわっているが、その代表格である風力も太陽光も未だに市場競争力を得られないままだと指摘。あまつさえ、大きな資本を必要とするグリーン雇用の推進により既存の雇用が損なわれているのが実態だとし、具体例としてスペインと英国では風力産業などに対する1人分の補助金が高額なため、グリーン雇用を1人分創出する際、それ以外の雇用が2.2人分以上失われたとしている。

これに対してロムニー陣営では、「エネルギー部門は国全体の経済の蘇生を牽引できる」という信念のもと、石油や天然ガス、石炭、そして原子力で時機を逸せずにエネルギーを生み出すため、政府は強力で確実かつ有効な規則を有するべきだと断言。代替エネルギーの基礎研究に予算を付ける一方、市場において競争力を持つまでに進展しないエネルギーへの助成は段階的に縮小していくべきだと強調した。

そのための第1段階としてロムニー氏は、石油と天然ガスの国内資源開発を促進するとともに、原子力への投資拡大を促す合理的で最新方式の規制を採用する考えを提示。固定の日程に合わせた優先的な手続きによって開発や探査の承認・許認可が発給されるよう統合し、規制手続きにおいてエネルギー企業を取り巻く不確実性の雲を取り払う考えだとしている。

〈原子力の規制改革〉

原子力規制に関しては特に1項を設け、「原子力産業の規制構造改革にはとりわけ注意を払うべきだ」と主張。現行の構造は異常に煩雑で範囲も限定的であるとし、一例としてNRCの体制ではたった1種類の原子炉設計しか審査できないと述べた。同氏によると、こうした制限が競争を阻害するとともに技術革新を抑制、価格も上昇する。1つの設計審査が延々と引き延ばされるせいで、現在NRCの手元では17件・26基分の審査が滞っていると指摘した。

このような背景から、同氏はフランスや中国で過去10〜30年の間に10〜15基もの原子炉が建設されてきた同じ時期に、米国では1件の建設許可も発給されなかったことは驚くにあたらないと強調。自身が大統領となった暁には、既存の原子力発電所サイトや隣接地区で承認された設計であれば、いかなる原子炉についても2年以内に認可が発給されるようNRCの手続きを効率化する方針だと明言している。同時に、NRCが複数の認証済み設計について安全性と信頼性を審査・承認できるよう、能力を拡大していく考えだ。


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