ゼロシナリオ支持高く 討論型世論調査 安全の確保を重視

エネルギー・環境問題に関する国民的議論の一環として、討論型世論調査が行われ、このほど、調査結果が取りまとめられた。

全国から無作為に抽出されたおよそ300人の一般市民らが、都内の大学キャンパスに4、5日の2日間、「討論フォーラム」に参加し、小グループ討論と全体会合を通じ、その前後に行うアンケートで、熟慮した意見がどのように変化しているかを調べるもの。本調査手法が、国政レベルで用いられるのは、世界的にも初の試みとみられ、今後の他分野における政策形成に向けても、その反映プロセスや、国民からの反響が注目される。

調査全体の企画・運営に当たったのは、曽根泰教・慶應大学政策・メディア研究科教授を中心とするグループで、この他、討論型世論調査を考案したジェームス S.フィシュキン・スタンフォード大学教授を始めとし本手法について意見を提供する監修委員会、討論内容に関して専門的見地から助言する専門家委員会、調査の実施過程を検証する第三者委員会からなる実行体制をとり、運営の中立性が担保されるようになっている。

今回の調査は、7月7〜22日に、無作為抽出で全国20歳以上の男女を対象に電話世論調査(T1)を実施し、計6849人からの回答を得た上で、その中から、「討論フォーラム」への参加者を募り、資料を送付し、当日、討論前アンケート(T2)を実施した後、15人程度の小グループ討論と、専門家への質疑応答を行う全体会合を経て、討論後アンケート(T3)を実施する格好で進められた。

「討論フォーラム」は、これまでの意見交換会と異なり、行政や専門家による発表が先立つことなく、参加者による討論から始まるのが特徴で、約15人が環状に机を並べて行う小グループ討論では、企業研修等で一定の見識を持つモデレーターを置き、参加者の発言を集約しつつ全体会議での専門家に対する質問事項を整理する。モデレーターは、参加者らに結論を誘導せぬよう、事前に、討論での色々な場面を想定した訓練が施されている。

小グループ討論は、全国から無作為に選ばれたメンバーが会することもあって、最初の自己紹介では、「宝くじにでも当たったかのよう」などと、今回の調査への参加を好機ととらえる人、建築現場での負傷経験から「想定外」を意識する必要を訴える人、エンジニアとしての経歴から日本の技術力への期待を主張する人などがあった。

「討論フォーラム」を終え、記者会見に当たった曽根教授は、夏の行楽シーズンに全国から一定数の参加者を募ることが最も困難だったなどと所感を述べた。また、フィシュキン教授は、これまで70か国での討論型世論調査を見てきた経験から、参加者らが「異なる意見にも耳を傾けていた」などと述べ、質の高い討論だったと評価している。

今回の討論型世論調査の結果は、政府のエネルギー・環境会議「国民的議論の検証会合」開始に合わせて、既に22日に発表されており、討論に参加した285人の回答に基づき、意見変化に関する分析が示されている。その内容については、ここで詳述しないが、「ゼロシナリオ」、「15シナリオ」、「20〜25シナリオ」の3シナリオに対する支持に関して、賛否の強さを「0」〜「10」の11段階で回答を求めたところ、支持レベルが最も高かったシナリオは、T1〜T3のいずれも、「ゼロシナリオ」で、支持率がそれぞれ、34%、42%、47%と、調査の進展に応じ上昇している。また、「ゼロシナリオ」を支持する人は、エネルギーを選択する際に、安全の確保を重視する割合がT1〜T3を通じ一貫して高く、「20〜25シナリオ」の支持者では、安全の確保より、エネルギーの安定供給を重視する割合が高く、これは調査段階につれ上昇した。「15シナリオ」の支持者は、安全の確保、エネルギー安定供給のいずれも重視する割合が高く、特に、T2では安全の確保を100%の人が重視するとしている。


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