政府 近くエネ戦略決定 原子力「ゼロ」シナリオ 実現には相当の困難性

政府のエネルギー・環境会議が4日に開かれ、議長の古川元久・国家戦略担当相が「革新的エネルギー・環境戦略」策定に向けた国民的議論の検証結果を報告、枝野幸男・経産相からは原発ゼロとする場合の課題として、使用済み核燃料の扱い、再生可能エネ・省エネの大規模導入、温室効果ガス排出量増、経済・国民生活への影響などに関するデータが示された。藤村修官房長官は、同日の記者会見で、「戦略の内容をしっかりと固めて、政府として責任を持って、なるべく早く戦略を決定していく」と述べた。

政府は、戦略策定に向け、2030年の原子力比率に応じ、「ゼロシナリオ」、「15シナリオ」、「20〜25シナリオ」の3つの選択肢を用意し、パブリックコメント、討論型世論調査などを実施してきており、これら国民的議論を受け、8月末に行われた有識者検証会合による検討結果も同会合の座長を務めた古川大臣が報告した。

また、原発ゼロとする場合の課題について、枝野大臣より検討結果が示され、使用済み核燃料の扱い、再稼働への影響、政策変更に伴う影響から生じる電力需給ひっ迫、電気料金上昇、追加的国民負担を「まず向き合わなければならない課題」とし、技術と人材の喪失、日米関係を含む外交・安全保障への影響、エネルギー調達における交渉力の低下を「不可逆的な影響が出る課題」とに分けデータを示した。

さらに、これらを乗り越えた上で克服すべき課題として、(1)現実的な代替エネルギー源の開発(2)中期的な温暖化問題への対処方針(3)立地地域の構造転換――を掲げ、シナリオごとの経済影響、克服策などを述べている。

再生可能エネで、原子力の発電電力量を代替するには、大規模な導入が必要となるが、原子力1基分(120万kW相当)と比較した投資額は、住宅太陽光で4〜8倍、風力で2〜3倍にも上るという。また、総電気代では10年実績15兆円のところ、「15シナリオ」では23兆〜32兆円に、さらに「ゼロシナリオ」では最大6.1兆円がこれに加わり、2.5倍に上昇するとしている。

枝野経産相は4日の閣議後会見で、原発ゼロの課題に関連して、今後の日本の原子力国際展開に関して、「平和利用で長く大きな実績を持っており、除染、使用済み燃料など、これから技術力を高めていかねばならない」などと述べ、新興国における原子力安全確保の責務からも、国内の原発依存度低減とは「イコールではない」と強調した。燃料サイクルへの影響については、多くの関連施設を立地する青森県の理解を得るよう努めていく考えを述べた。


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