事故の学術的課題問う 学術会議シンポ 3事故調委員長が報告

日本学術会議は8月31日、福島原子力発電所事故に関する政府、国会、民間の各調査委員会の委員長らを招き、調査結果について説明を受けるとともに、事故を通じて明らかになった学術としての課題を洗い出し、今後の科学者コミュニティのあり方を考察するシンポジウムを、東京・六本木の同会議本部講堂で開催した。7月末の政府の事故調査・検証委員会による最終報告公表を受け、各事故調の報告書が出そろったところ。

政府事故調の畑村洋太郎委員長(東京大学名誉教授)は、「100年後の評価にも耐える」ことを目標に、「何が起きたのか」ではなく、「何を学ぶのか」という視点で調査・検証に当たってきたとした上で、原子力発電所の設計に際して、地震への相当な対策と比べ、津波への想定・備えが不十分だったことを指摘し、「違う向きからも考える」必要を強調した。

民間事故調の北澤宏一委員長(科学技術振興機構顧問)は、事故の遠因として、「原子力ムラ」のなれ合い的な体質を批判し、安全規制に携わる側も推進側と同等の力量が持てるよう、教育の重要性にも言及した。

また、国会事故調の黒川清委員長(元学術会議会長)は、報告書に掲げた提言事項の実現に関し、「立法府のガバナンスが効いていなかった」などと、これまでの国策の進め方を振り返った上で、国会議員らが調査結果を読んで民意に訴えかけることを期待した。

3つの事故調報告を受けた総括討論では冒頭、元学術会議会長の吉川弘之氏が登壇、プレゼンを行い科学者・専門家の社会的役割の重要性を呼びかけた。また、発災後、放射性物質の及ぼす健康影響評価などで活動してきた柴田徳思氏(千代田テクノル研究主幹)は、高レベル放射性廃棄物処分問題にも言及し、学術の役割として、まず「信頼される科学者集団」であることを強調した。会場参加者からは、原子力事故に関し、海外の科学アカデミーとも対等にやり取りのできる特別委員会を早急に立ち上げるべきなどと、学術会議に対し苛立ちを含んで要望する声もあった。


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